任意整理の際に保証人へ与える影響について
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
借金の支払いが苦しくなったら、債務整理で解決することができます。もし借金に保証人が付いている場合には、債務整理により保証人に影響を及ぼすことも知っておきましょう。
ここでは、借金の保証人の責任や債務整理が保証人に与える影響について説明します。保証人がいる場合には任意整理を選択するとメリットがあることについても理解しておいてください。
目次
借金の保証人にはどんな責任がある?
借金には保証人が付いていることがある
債務の保証人とは、本来お金を払わなければならない人(主債務者)が支払いをしない場合に、自分が代わりに支払うことを債権者との間で約束した人です。貸金業者の借金に保証人が付いている場合には、特に責任が重い連帯保証人であることが多くなっています。
連帯保証人の責任とは?
連帯保証人の場合には、保証人に認められている次の3つの権利(利益)が排除されています。
(1) 催告の抗弁権
保証人が支払いを請求されたとき、「先に主債務者に請求してください」と言える権利です。連帯保証人には催告の抗弁権がないので、債権者から請求を受けたら直ちに支払いをしなければなりません。
(2) 検索の抗弁権
主債務者に財産があるのに支払いを請求された場合に、「主債務者の財産に強制執行してください」と主張できる権利です。連帯保証人には検索の抗弁権がないので、たとえ主債務者に財産があっても、自らが請求されたら支払いをしなければなりません。
(3) 分別の利益
保証人が複数いる場合、1人の保証人は人数で割った金額のみを払えばよいというのが分別の利益です。たとえば、借金の金額が200万円で保証人が2人いる場合、1人は100万円を払えばよく、残りの100万円を払う必要はありません。しかし、連帯保証人には分別の利益がないので、請求されたら借金の全額(この例では200万円)を払う必要があります。
保証人が付いている借金はどんな借金?
保証人が付いている借金は、商工ローンや不動産担保ローンなどです。消費者金融や銀行のカードローンでは、保証人は不要とされています。ただし、銀行カードローンの場合には、銀行が指定する保証会社の保証を受けることが条件となっているのが一般的です。
保証会社の保証を受ける借金の場合、支払いが滞ると保証会社が自動的に返済(代位弁済)してくれます。ただし、保証会社の代位弁済後は、求償権(立て替えたお金を主債務者に請求する権利)を持つ保証会社から必ず請求を受けることになるので、保証会社に対しての支払い義務が残ります。
債務整理をすれば保証人の責任はどうなる?
債務整理とは、法律にもとづき借金の減額・免除を受ける手続きです。債務整理のうち主に利用される方法は、任意整理、個人再生、自己破産です。
個人再生または自己破産を行った場合、主債務者の借金は減額・免除されますが、保証人にはその効果が及びません。そのため、債権者は保証人に一括返済を要求することが考えられます。保証人が借金の支払いを行った場合、主債務者に対し求償権を行使できますが、この求償権も免除や減額の対象になってしまいます。
つまり、自己破産や個人再生をすると、保証人に迷惑をかけてしまうことは必須です。保証人への影響を最小限にしたいなら、保証人も一緒に債務整理をしなければなりません。
借金の保証人がいる場合には任意整理がおすすめ
任意整理とは
任意整理は、債権者と直接交渉して和解し、借金を減額してもらう方法です。裁判所を通さずに手続きできるので、迅速に借金を整理できます。
任意整理では、借金の元本を減らすことはできません。しかし、将来発生する利息は交渉により免除してもらえるので、和解後は元本のみを返済すればよくなり、借金の総支払額を減らせます。
任意整理なら保証人への影響なしに借金を整理できる
自己破産や個人再生の場合には、原則として抱えているすべての借金が対象債務となります。一方、任意整理ではすべての借金を対象にする必要はなく、一部の借金のみを整理できます。
保証人の付いていない借金のみを任意整理することで借金を圧縮し、保証人付きの債務はそのまま返済することで、保証人に迷惑をかけずに借金の負担を軽くすることが可能になります。
保証人と連名で任意整理する方法もある
保証人が付いている借金を任意整理する場合には、保証人と連名で手続きする方法があります。保証人と連名で任意整理をすれば、債権者は保証人に対しても借金の全額を請求することはありません。和解が成立した後は、和解契約どおりの条件で支払いを行えば、保証人に請求される心配もないということです。
連名で任意整理する場合の保証人への影響
保証人と連名で任意整理をした場合、主債務者だけでなく、保証人もブラックリストに載ってしまう点に注意が必要です。ブラックリストに載るとは、信用情報機関に事故情報が登録されることを意味します。
任意整理でブラックリストに載る期間は5年程度ですが、その間は保証人も新たな借金ができません。保証人もクレジットカードを作ったり、各種のローンを組んだりすることができなくなるため、少なからず迷惑をかけてしまうことになります。
保証人と連名で任意整理する場合には、保証人とよく話し合った上で手続きするようにしましょう。
保証人がいる場合の過払い金請求はどうなる?
過払い金請求とは
過払い金請求は、利息制限法で許容されている範囲を超えて払い過ぎになっている利息(過払い金)を取り戻す手続きです。貸金業者では過去に違法なグレーゾーン金利で利息を徴収していたことがあるので、取引年数が長い人は過払い金が発生していることがあります。
過払い金請求には最終返済日から10年という時効があり、時効になっていれば過払い金の取り戻しはできません。しかし、時効になっていない限り、既に完済した借金であっても、過払い金請求ができます。
完済後の過払い金請求は保証人に影響なし
既に完済している借金について過払い金請求しても、保証人に迷惑をかけることはありません。借金を完済したときに保証人の債務は消滅しているので、貸金業者が保証人に請求をすることはないからです。
ただし、保証人が借金の返済をしているケースでは、保証人にも過払い金を請求する権利があるため、貸金業者は主債務者のみからの過払い金請求に応じないことがあります。このような場合には、保証人の関与が必要になる可能性があります。
返済中の過払い金請求は保証人に注意
まだ返済中の借金で過払い金が出ている場合でも、過払い金請求の手続きはできます。この場合、貸金業者は保証人に借金の一括返済を請求する可能性があります。過払い金請求を受けた貸金業者は、主債務者に返済の請求ができなくなるので、代わりに保証人に全額を請求しようと考えるからです。
保証人には迷惑をかけられないという場合には、先に借金を完済してから過払い金請求の手続きをする方法があります。借金の完済が無理な場合、保証人と一緒に過払い金請求することで対処できる可能性もあります。まずは弁護士や司法書士に相談し、対処法を検討するのがおすすめです。
まとめ
借金の保証人がいる場合、個人再生や自己破産をすれば保証人に迷惑がかかってしまいます。任意整理なら保証人への影響なしに手続きすることも可能です。
一部の借金について保証人がいる場合には、任意整理で保証人の付いていない借金のみを整理して負担を軽くできないかを検討しましょう。
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