債務整理すると不動産も処分されてしまうの?
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
不動産を所有している方は、「債務整理をすれば不動産をとり上げられるのではないか?」と心配なのではないでしょうか?債務整理にはいくつかの方法がありますが、どの方法を選ぶかで不動産の扱いが異なります。
それぞれの債務整理方法と不動産への影響について知っておきましょう。
目次
任意整理では不動産を処分されることはない
任意整理をすれば月々の返済が楽になる
任意整理は、お金を借りている銀行や消費者金融と直接話し合いをして、借金の支払い方法を変更してもらう手続きです。任意整理をしても借金はなくなりませんが、毎月の返済額を減らせます。
任意整理では将来の利息はカットしてもらえるので、返済期間が延びても負担が大きくなることはありません。
任意整理では住宅ローンを除外できる
住宅ローンでは不動産が担保になっているため、約束どおりの支払いができなければ、不動産を競売にかけられてしまいます。住宅ローンを整理すれば不動産を処分しなければならないということですから、不動産を残したいなら住宅ローンを整理の対象から外さなければなりません。
任意整理では、整理する借入先を選べます。住宅ローンがある場合には、住宅ローンを対象から外すことが可能です。住宅ローンを借りているのと同じ銀行でカードローンを利用している場合でも、任意整理なら住宅ローンを除外してカードローンのみを整理することが可能です。
任意整理では不動産を所有しているかどうかは問題にならない
任意整理でやることは、毎月の返済額を減らす交渉のみです。任意整理では、手持ちの資産が手続きに影響することもありません。住宅ローンのない不動産を所有している場合でも、不動産を処分して借金の返済に充てる必要はないということです。不動産を失いたくない場合、任意整理は最もおすすめの債務整理方法と言えます。
個人再生で不動産を残したいなら住宅ローン特則を利用
個人再生すれば借金全体が圧縮される
個人再生とは、すべての借金(債務)について、裁判所に減額を認めてもらう手続きです。個人再生をすれば、通常、借金の総額が100万円もしくは5分の1まで圧縮されます。個人再生の手続きをとっても、申立後すぐに借金が減るわけではありません。再生計画どおり3年間返済を行うことが借金減額の条件となります。
住宅ローン特則の利用で不動産を残せる
個人再生では、原則として今ある債務のすべてが整理の対象になります。住宅ローンを抱えている場合には、住宅ローンも整理しなければなりません。住宅ローンを整理すれば、金融機関に不動産をとり上げられてしまいます。
なお、民事再生法には、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)という規定があり、住宅ローンを除外した個人再生の申立てをすることも可能です。住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンはそのままにして債務整理ができます。住宅ローン特則を付けて申し立てすれば、住宅ローン支払い中の不動産を処分しなくてすむということです。
個人再生では不動産を処分しなくてもよい
個人再生では、弁済額と同程度の財産は手元に残すことができます。住宅ローンのない不動産を所有している場合、必ずしも不動産を処分しなくてもかまいません。実際に不動産を残せるかどうかはケースバイケースの判断が必要ですから、事前に専門家に相談しましょう。
自己破産をすれば不動産は処分されてしまう
自己破産では借金が全額免除される
債務整理のうち自己破産は、借金を払えない状態であることを裁判所に認めてもらう手続きです。自己破産後に免責許可を受けることで、借金の支払いが免除されるしくみになっています。
自己破産すれば不動産は処分することになる
自己破産する場合、住宅ローンも当然に整理の対象になるため、住宅ローン支払い中の不動産を残すことはできません。また、手持ちの財産は換金して可能な限り借金の返済に充てなければならず、住宅ローンのない不動産も処分する必要があります。
自己破産しても不動産を残す方法はある?
自己破産の際にどうしても不動産を残したいなら、家族に買い取ってもらう方法があります。ただし、このような場合に、家族が住宅ローンを組むことを金融機関は許可してくれません。家族に不動産を買い取ってもらうなら、購入代金を一括で払ってもらう必要があります。
不動産がある場合の債務整理で注意しておきたいこと
不動産を処分したくない場合は事前に相談を
不動産を所有している場合、債務整理の方法によっては、不動産を処分されてしまう可能性があります。不動産を手ばなしたくない場合には、不動産に影響のない債務整理方法を選ぶ必要があります。
不動産がある場合の債務整理は、事前に司法書士などの専門家に相談しましょう。債務整理にはいくつかの方法がありますが、それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。単に借金がどれくらい減るかだけでなく、できるだけデメリットの少ない方法を選ぶことが大切です。
不動産担保ローンを組んでいるケースは要注意!
住宅ローン以外にも、不動産を担保にお金を借りているケースはあると思います。不動産担保ローンを利用している場合、不動産担保ローンを整理すれば、不動産が競売にかけられてしまいます。
不動産が担保になっているかどうかは、登記事項証明書で確認できます。債務整理をする前に、法務局で登記事項証明書を取得し、不動産に担保が設定されていないかを確認しておきましょう。
債務整理後に不動産を購入する際にも影響が出る
今は不動産を持っていないけれど、将来的に不動産を購入したいと考えている場合にも、債務整理による影響は無視できません。債務整理をすると、その後不動産を購入するときに、住宅ローンが組めないことがあります。
どの債務整理方法を選んでも、債務整理後しばらくの間は信用情報機関に事故情報が登録され、ブラックリストに載ります。ブラックリストに載っている期間は短ければ5年程度ですが、個人再生や自己破産をすれば10年程度ブラックになってしまうことがあります。
信用情報がブラックになっている間は、借入の審査には通りません。住宅ローンの申し込みをしても、審査に落ちてしまいます。債務整理をすれば借金は減額や免除になりますが、当面の間借入が制限されます。債務整理のタイミングには十分注意しておきましょう。
不動産を賃借している場合には債務整理の影響はない
不動産を所有しているのではなく、不動産を賃借しているケースでは、債務整理が不動産に影響することはありません。たとえ自己破産しても、不動産の賃貸借契約が解除になることもありませんから、これまでどおり住み続けることができます。
債務整理後に不動産を賃借する場合でも、債務整理したことを理由に賃貸借契約の審査に落ちるということは、通常はありません。賃貸借契約の審査では、金融機関が加盟している信用情報機関の情報を照会することはないからです。
ただし、賃貸借契約において、保証会社の保証を受けることが条件になっている場合には、保証会社の審査に落ちてしまう可能性はあります。債務整理後に物件探しをするときには、保証会社の保証を受ける必要があるかどうかにも注意を払っておくとよいでしょう。
まとめ
債務整理のうち、任意整理を選べば、不動産を処分されることはありません。個人再生でも、住宅ローン特則の利用によって、住宅を残すことは可能です。住宅を手ばなしたくないなら、債務整理には細心の注意が必要です。専門家に相談した上で、債務整理の方法やタイミングを考えましょう。
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