離婚時の財産分与を放棄する際の注意点
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
離婚するときには配偶者に対して財産分与を請求できますが、財産分与は放棄することも可能です。
を財産分与を放棄すれば、離婚してから後悔する可能性もありますから、慎重にならなければなりません。ここでは、財産分与を放棄する際の注意点について説明します。
財産分与請求権とは?
離婚の際には配偶者に財産分与を請求できる
<P.夫婦が婚姻期間中共同で築いた財産は、夫婦の共有財産とみなされます。離婚するとなると、共有財産を分ける必要性が出てきます。離婚する相手が財産を持っている場合には、財産分与を請求することができます。
財産分与請求権とは、財産分与を請求する権利のことです。
財産分与請求権を行使する方法
日本では、夫婦が離婚するときに必ずしも裁判所を通す必要はなく、話し合いによる協議離婚ができます。財産分与などの離婚条件についても、話し合いでお互いが合意すれば、どのように決めてもかまいません。
財産分与を相手に請求しても財産を渡してもらえないなど、話し合いで決まらない場合には、家庭裁判所で調停を行うことができます。
財産分与請求権を行使できる期間は限られている
財産分与の請求をするのは通常は離婚するときですが、離婚後でも財産分与請求はできます。ただし、財産分与請求権を行使できる期間は限られており、離婚後2年以内となっています。
この離婚後2年という期間は、厳密には裁判所を通じて財産分与請求できる期間です。2年を過ぎて財産分与請求して相手が任意に応じてくれた場合、財産分与が無効になるわけではありません。
しかし、離婚後何年も経過してから財産分与してもらえる可能性は低いですから、財産分与請求は離婚後2年以内しかできないと思っておいた方がよいでしょう。
財産分与請求権は放棄できる?
財産分与請求をするかどうかは自由
離婚時に相手に対して財産分与請求できることを知っていても、何らかの理由で請求したくないと思うこともあるでしょう。たとえば、財産分与請求をすれば争いになることが予想される場合、請求せずスムーズに離婚することを選ぶ人もいると思います。
もちろん、財産分与請求権があっても、必ず行使しないといけないわけではありません。現実に財産分与請求をしなかったら、財産分与を放棄したことになります。
財産分与を積極的に放棄する意思表示もできる
離婚時に財産分与をせず放棄する旨の意思表示をすることもできます。財産分与放棄の意思表示は、口頭で行っても有効です。ただし、後で「言った」「言わない」の争いになることがありますので、離婚協議書を作成し、記載しておくべきでしょう。
離婚協議書を公証人に公正証書にしてもらう場合でも、財産分与放棄の条項を盛り込むことはできます。
財産分与を放棄すると再度請求するのは困難
財産分与を請求するか放棄するかは自由です。ただし、一度財産分与を放棄してしまうと、たとえ2年以内でも、再度請求するのは困難になってしまいます。財産分与の放棄は、慎重に行うようにしましょう。
配偶者側に財産分与の放棄を求めることはできるの?
配偶者の意思に反して財産分与放棄させることはできない
自分が財産分与する側の場合、配偶者に財産分与を放棄してほしいこともあるでしょう。財産分与請求権を行使するかどうかは、権利を持っている側の自由です。配偶者が任意に応じてくれるのであれば、財産分与放棄をしてもらってもかまいません。
しかし、配偶者側が財産分与の放棄に応じない場合に、無理矢理応じさせることはできません。権利放棄するかどうかは、あくまでも本人の自由な意思で決めることです。たとえ裁判所に調停を申し立てても、配偶者に財産分与を放棄させるということはできません。
慰謝料や養育費と財産分与は分けて考える
配偶者に慰謝料を払うので、代わりに財産分与を放棄してもらいたいという場合もあると思います。慰謝料と財産分与は基本的に別のものです。配偶者が慰謝料請求権と財産分与請求権の両方を持っている場合に、本人が納得しないのに一方を放棄してもらうことはできません。
たとえば、慰謝料として200万円、財産分与として200万円の支払い義務がある場合、慰謝料として400万円支払えば、財産分与を放棄させてもよいような気がします。
しかし、離婚時に不動産を渡す場合、受け取る側は財産分与として受け取れば不動産取得税がかかりませんが、慰謝料として受け取れば不動産取得税の課税対象となってしまうという違いがあります。
同様に、養育費を支払う代わりに財産分与を放棄させるということもできません。養育費の支払いは当然の義務で、財産分与と一緒にすべきではないものです。財産分与、慰謝料、養育費は、それぞれ違った意味があり、請求できる期間や相続の可否、課税関係などが違ってきますから、分けて考えるようにしましょう。
財産分与の際はトラブル回避のために公正証書を作成しておこう
離婚協議書は離婚時に作成する契約書
他人と契約を結んだときには、トラブル防止のため、契約書を作るのが通常です。離婚すれば夫婦は他人になりますから、離婚するときに夫婦間で取り決めした事項は、離婚協議書という契約書にしておくのが安心です。離婚協議書には決まった書式はありませんが、公証役場で公正証書の形にしておくのがおすすめです。
公正証書には証明力がある
公正証書は、公証役場で公証人に作成してもらう公文書です。公務員である公証人が本人確認や意思確認を行った上で作成しますから、本人が間違いなく自分の意思で約束したことを証明できる書類となります。
公正証書には執行力もある
公正証書には、執行力もあります。公正証書で金銭の支払いについて取り決めしたにもかかわらず、債務者が約束どおり支払いを行わなかった場合には、裁判を経ずして強制執行の手続きができます。
財産分与について公正証書を作成するメリット
公正証書には執行力がありますから、離婚後に支払い義務が残る場合には、公正証書を作成しておくメリットが大きくなります。離婚時に存在する財産を分けるものですから、通常は離婚時に支払いも完了します。しかし、財産分与で離婚後に支払いが残ることもあります。
たとえば、住宅の財産分与をする場合、一方が住宅に住み続け、他方に住宅の評価額の半分を支払うという方法もあります。この場合、住み続ける側の手元に現金がなければ、相手の了承を得て分割払いにすることができます。
財産分与を分割払いにする場合、公正証書を作成しておけば、受け取る側にとっては安心感が大きくなります。
離婚協議書に清算条項を入れるときには注意
公正証書を作成するときには、最後に「甲及び乙は、本契約に定めるほか相互になんらの債権債務がないことを確認する」などの清算条項を入れることが多くなっています。公正証書で財産分与について書いていなくても、清算条項を入れた場合には、財産分与請求権を放棄したことになってしまいます。
逆に、離婚時に公正証書を作成していても、財産分与について書いておらず、清算条項も入れていない場合には、離婚後も追加で財産分与請求ができることになります。公正証書を作成するときには、専門家に案文作成を依頼し、将来トラブルが発生しない形にしてもらいましょう。
まとめ
協議離婚するときには、財産分与についても、離婚協議書や公正証書にきちんと書いておきましょう。記載の仕方によって効果が変わることもありますから、離婚協議書・公正証書は、専門家に作成をサポートしてもらうのが安心です。
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