債務整理のデメリットと回避する方法
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
債務整理とは、債務すなわち借金を整理することです。借金をしてしまうと、その後状況によっては返済が苦しくなってしまうことがあります。そのようなときに、法的な手続きを経て、借金の減額や免除を行うのが債務整理になります。ここでは、債務整理のデメリットと、デメリットを回避するための方法について説明します。
目次
債務整理の4つの方法
債務整理として一般に用いられる方法には、次の4つがあります。
①自己破産
地方裁判所に申し立てることにより、債務の全額を免除してもらう手続きになります。持っている財産はすべて換金して借金の返済に充てることになりますので、財産も失ってしまうことになります。
②個人再生
地方裁判所に申し立てることにより、債務を大幅に減額してもらう手続きになります。裁判所の認可を受けた再生計画に従った借金の返済を原則3年間行えば、残りの借金を免除してもらうことができます。
③特定調停
簡易裁判所に申し立て、裁判所の調停を利用して、債権者と借金の支払方法について話し合う手続きになります。
④任意整理
裁判所を通すことなく、債権者と直接交渉することにより、借金を減額してもらったり支払期間を延長してもらったりする手続きになります。
債務整理のデメリットとは?
債務整理をすれば、借金の負担を軽くすることができるという大きなメリットがあります。特に、複数の借金を重ねて返済が困難になってしまった場合には、自分の力だけではどうしようもないことがありますから、債務整理をして早めに生活の立て直しを図るのが安心です。
ただし、債務整理には以下のようなデメリットもありますから、知っておきましょう。
ブラックリストに載る
債務整理には上に書いた4つの方法がありますが、どの方法でも共通のデメリットとして、ブラックリストに載ってしまう点があります。ちなみに、「ブラックリスト」という言い方が一般的になっていますが、実際にブラックリストという名簿があるわけではありません。「ブラックリストに載る」とは、信用情報機関に事故情報が登録されることを意味します。
信用情報とは、融資の可否を判断する手がかりとなる情報のことで、これまでに利用したクレジットやローンなどの契約内容や支払状況、利用残高などが含まれます。こうした個人の信用情報は、各金融機関が加盟する信用情報機関に集められており、金融機関は信用情報機関を通して情報共有を行っています。
債務整理を行った事実は、事故情報として信用情報機関に登録され、登録された事故情報は5~7年間は削除されません。金融機関で融資の審査を行う際には、必ず申込者の信用情報を確認しますから、申込者の信用情報に事故情報が登録されていれば審査に落ちてしまいます。つまり、ブラックリストに載っている間は、新たな借入れができないことになります。
費用がかかる
借金を減らすための債務整理ですが、債務整理の手続き自体にも費用がかかってしまいます。裁判所で行う手続きでは、申立費用や予納金など、裁判所に支払う費用が発生します。また、弁護士や司法書士に債務整理を依頼すれば、別途報酬も支払わなければなりません。任意整理は裁判所を通さずにできますが、自分で任意整理の手続きをするのは現実には困難ですから、専門家の報酬の負担は必要です。
手間や時間がかかる
債務整理は思い立ってすぐにできるようなものではなく、それなりの準備が必要です。契約内容や借入残高がわかる書類がなければ手続きが進められませんので、こうした書類を探し出したり取り寄せたりしなければなりません。裁判所に申し立てる手続きでは、申立書や債権者一覧表などの書類を用意しなければなりませんから、さらに手間や時間がかかってしまいます。
官報に名前が載ることがある
自己破産または個人再生を行った場合には、官報公告と言って、官報(国の広報誌)に氏名と住所が掲載されます。と言っても、官報を一般の人が目にすることはほとんどないため、それで直ちに周りに債務整理がバレてしまうということは、通常はありません。ただし、官報に名前が載ると、ヤミ金業者のターゲットにされ、ダイレクトメールが送られてくるようなことはあり得ます。
職業の制限を受けることがある
自己破産した場合には、破産の決定(破産手続開始決定)が出てから免責の決定が出るまでの間、資格や職業の制限を受けることになり、該当する資格や職業で仕事をしている人は、一時的にその仕事ができなくなってしまいます。
制限を受ける職業・資格には、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、警備員、生命保険募集員、損害保険代理店、旅行業者などがあります。
なお、以前は破産者は株式会社の取締役の欠格事由となっていましたが、新会社法の施行により、現在は破産者であっても取締役になれます。ただし、就任中の取締役が破産した場合には、会社との委任契約の終了事由となります(民法653条)。
保証人に迷惑がかかることがある
債務整理を行うと、主債務者の返済義務は免除になったり減額になったりしても、連帯保証人の保証債務についてはそのままです。主債務者が債務整理しても、債権者は保証人に返済を要求することがありますので、保証人に迷惑がかかってしまうことがあります。保証人の付いている借金がある場合には、保証人も一緒に債務整理するなど、慎重に検討する必要があります。
債務整理のデメリットを回避する方法
債務整理には、上記のようなデメリットがあります。債務整理のデメリットをできるだけ少なくするためには、以下のような点を心がけると良いでしょう。
任意整理が可能なら任意整理を選ぶ
債務整理の中で、最もデメリットが少ない方法が任意整理になります。任意整理では借金が免除になるわけではありませんが、少なくとも将来の利息についてはカットできますので、トータルの支払額を減らすことができます。借金の残高がまだそれほどでもなければ、任意整理が可能ですので、任意整理を選ぶのがおすすめです。
任意整理では裁判所を通す必要がないため、交渉さえまとまれば、比較的スピーディーに手続きを完了することができます。任意整理なら官報に名前が載ったり、職業の制限を受けたりすることもありません。
また、任意整理ではすべての借金を整理する必要はなく、任意整理する借金を選ぶことができます。たとえば、保証人に迷惑がかからないように、保証人の付いている借金を任意整理の対象から外すといったことも可能です。
さらに、利息制限法の上限を超える金利で契約していて払い過ぎの利息(過払い金)が発生している場合、任意整理をすることにより、過払い金の取り戻しが可能になります。戻ってくる過払い金の額が多ければ、専門家に支払う報酬を差し引いても、プラスになることもあります。
手続きを専門家に依頼する
債務整理は、弁護士・司法書士といった専門家に依頼することができます。専門家に依頼することで、書類作成などの手間を大幅に削減することができ、最短で手続きを完了させることが可能になります。また、どの方法で債務整理をしたら良いかについてもアドバイスを受けられますので、債務整理の失敗が少なくなります。
なお、債務整理を専門家に依頼すれば、依頼時点で債権者(貸金業者)宛に受任通知が送られます。貸金業法の規制により、貸金業者は受任通知を受け取った後、債務者に直接支払いを請求できません。つまり、専門家に依頼すれば、督促や返済をストップさせ、落ち着いて債務整理の準備ができるというメリットもあります。
債務整理を行うなら、デメリットを最小限に抑えたいものです。当事務所では、借金問題でお困りの方のご相談を受け付けています。それぞれの方に合った方法で失敗のない債務整理ができるようサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。
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