会社解散・清算時の社会保険手続き
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
会社が解散したときには、法務局や税務署での手続きの他に社会保険関係の手続きも発生します。社会保険の手続きの中には期限が設けられているものもありますので、解散前にあらかじめ概要を知っておくと、解散後スムーズに手続きをすすめることができます。ここでは、会社解散に伴う社会保険の手続きについてまとめています。
会社を解散したときに必要となる手続き
株式会社を解散するときは、まずは株主総会で解散決議を経たうえで、法務局で解散登記の手続きを行います。その後、会社は清算手続きに入りますが、清算手続きでは、債権者保護のための官報公告・債権者への個別催告等を経て、最終的に会社に残った財産(残余財産)を確定させるといった作業を行います。残余財産の株主への分配が終わると、清算結了となり、最終的に清算結了登記を行うことで、会社の登記簿が閉鎖され、会社は消滅することになります。
上記が会社の解散した場合の大まかな流れになりますが、会社を解散したときには、こういった手続きのほかに、社会保険の手続きや税務手続きも発生します。やるべきことが多数ありますので、計画的に手続きを進める必要があります。
会社解散に伴う社会保険手続き
会社には社会保険加入義務があり、設立時には社会保険の加入手続きを行っているはずですから、解散時には社会保険から脱退するための手続きも必要になります。会社解散後の社会保険手続きについて、具体的には以下のようになっています。
労働保険(労災保険、雇用保険)
会社で労働者を雇用し、労働保険に加入していた場合には、労働基準監督署(または都道府県労働局)及びハローワークへの届出が必要になります。
<労働基準監督署への届出>
労働保険の保険料は、年度当初に見込みで概算保険料を申告・納付する形になっています。そのため、年度途中に事業を廃止して保険関係が終了する場合には、既に納付済みの概算保険料の精算を行う必要があります。
保険料の精算手続きは、事業廃止の日から50日以内に「労働保険確定保険料申告書」を提出することによって行います。また、保険料を精算した結果、納付済の概算保険料の額が確定保険料の額よりも多い場合には、還付のために「労働保険料還付請求書」を提出する必要があります。
<ハローワークへの届出>
雇用保険の被保険者となっている従業員がいる場合、会社の解散によって退職することになりますので、退職のための手続きが必要になります。従業員の退職の手続きは、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を作成し、退職日の翌日から10日以内に事業所を管轄するハローワークに提出することにより行います。
従業員の退職手続きが完了し、雇用保険の被保険者が0人の状態になったら、事業所を廃止した日の翌日から10日以内に、「雇用保険適用事業所廃止届」を、事業所を管轄するハローワークに提出する必要があります。この届出の際には、解散後の登記事項証明書等が必要になります。
社会保険(健康保険及び厚生年金保険)
会社解散により、社会保険の適用事業所でなくなった場合には、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を年金事務所に提出する必要があります。この全喪届は、社会保険の適用事業所でなくなる理由が発生した日から5日以内が提出期限となっています。また、全喪届には、添付書類として、解散後の登記簿謄本、雇用保険適用事業所廃止届のコピー、給与支払事務所等の廃止届のいずれかが必要になります。
さらに、社会保険の被保険者となっている従業員は、事業所が廃止になった日の翌日に社会保険の資格を喪失することになるため、これらの従業員の健康保険証を回収した上で、「被保険者資格資格喪失届」を出す必要があります。保険証を添付できない場合には、「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」を作成して提出します。
まとめ
会社は、事業活動を終了したからと言って、簡単に閉鎖できるものではありません。会社を消滅させるためには、解散、清算結了といった法律上の手続きはもちろんのこと、それに伴って社会保険の手続きも発生します。会社の解散手続きをスムーズに進めるためには、専門家のサポートを受けるのがいちばんです。当事務所でも社会保険労務士等と連携し会社解散・清算手続きをトータルでサポートさせていただいております。ぜひご相談ください。
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