会社解散時の官報公告はしないといけない?官報の期間や費用を解説
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
この記事では、会社解散の際に行う官報公告(解散公告)について説明します。 官報公告をする目的や公告掲載の申し込み方法、公告をしなかった場合にはどうなるかについて知っておきましょう。
官報とは、政府が発行する機関誌(新聞)のこと。
解散する場合、会社は債権者に対して『2か月以上の期間内にその債権を申し出るべき旨』を官報に公告しなければならない。
官報公告をしなかったとしても、『清算結了登記』は申請できるが、官報公告を欠いた清算は、法律上有効な清算手続きとは言えない。
会社の解散手続きでは官報公告が必要
会社解散・清算の際の流れ
会社を解散したら、直ちに会社が消滅するわけではありません。会社には法人格があり、会社自体が資産や負債を持っています。会社を消滅させる前には、会社の保有する資産や負債を清算する手続きが必要になります。清算手続きが完了することを清算結了といい、清算結了することにより会社の法人格が消滅するしくみになっています。
会社解散から清算結了までの流れは、大まかには次のようになります。
① 株主総会の決議 | 解散の決議をし、清算人を選任します。 |
---|---|
② 解散・清算人選任登記 | 法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。 |
③ 官報公告 | 官報に会社の解散公告を掲載します。把握している債権者には個別に通知します。 |
④ 財産目録・貸借対照表の作成・承認 | 清算人が財産目録や貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受けます。 |
⑤ 資産の売却・債務の弁済 | 会社の資産を売却して現金化し、会社の債務を弁済します。 |
⑥ 残余財産の分配 | 会社に残った財産があれば、株主に分配します。 |
⑦ 決算報告の承認 | 決算報告書を作成し、株主総会の承認を受けることにより、実質的に清算結了となります。 |
⑧ 清算結了登記 | 法務局で清算結了した旨の登記をします。 |
官報公告とは?
上記表の③に書いたとおり、会社解散後の清算手続きの過程において、官報公告が必要になります。官報とは政府が発行する機関誌で、行政機関の休日を除き毎日発行されています。一般の人は官報をあまり見る機会がないと思いますが、現在はインターネットでも直近30日分の官報を無料で閲覧できるようになっています。
官報公告とは、官報に特定の事項を掲載して広く一般に知らせることをいいます。株式会社の場合には、解散公告以外に合併公告や株式交換公告、組織変更公告など、法律で官報公告が義務付けられているもの(法定公告)がいくつかあります。
なぜ会社解散で官報公告が必要なのか?
官報公告の目的や効果を理解しましょう!
解散公告は法律で義務付けられている
会社解散の際の官報公告は、会社法で義務付けられているものです。会社法第499条第1項では、次のように定められています。
(債権者に対する公告等)
第499条 清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
会社法の第475条は清算の開始原因について定めた規定ですが、第1号で「解散した場合」とされているため、会社解散後には官報公告が必要になります。定款で他の公告方法を指定している場合でも、解散公告については官報で行わなければなりません。
なお、債権申し出の期間は2か月を下回ることができないとされています。2か月の起算日は、官報に掲載された翌日になります。
官報公告の目的は債権者の保護
官報公告は、債権者保護の目的で行われるものです。会社に対して貸付金や売掛金などの債権がある人は、ある日突然会社が消滅すると、その債権を回収する機会を失ってしまいます。そのため、会社を消滅させる前に債権者に申し出てもらい、会社が債務を弁済する機会を設けるために、官報公告が義務付けられているのです。
債権者の個別催告も必要
会社解散時の債権者保護手続きとして、官報公告のほかに、わかっている債権者には個別の催告も行わなければならないとされています。官報は一般の人があまり見るようなものではないので、官報公告されていても気付かない債権者も多いでしょう。会社が把握している債権者に対しては、会社が解散した旨を直接知らせなければなりません。
官報公告の効果
会社法第499条第2項では、「当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない」とされています。つまり、期間内に申し出をしなかった債権者は清算手続きから除外できるということです。
官報公告があったにもかかわらず、債権申し出をしなかった債権者は、会社から弁済を受ける権利を失うことになります。会社の清算後に残余財産があればその範囲内で弁済は受けられますが、株主に対する残余財産の分配も終わっていれば全く弁済は受けられません。
なお、把握している債権者については、申し出がなかったとしても清算手続きから除外することはできず、債務を弁済する必要があります。
官報公告をしなかったらどうなる?
しかし、官報公告を欠いた清算は、法律上有効な清算手続きとは言えない為、様々なリスクがあるという点は理解しましょう!
解散から2か月経てば清算結了登記はできる
官報公告の際には、2か月以上の期間を定めて債権者に申し出てもらわなければなりません。つまり、解散から少なくとも2か月経たないと、法律上清算結了ができないことになります。会社の解散から2か月経ってないうちに清算結了登記を申請しても、法務局では受け付けてもらえません。
ただし、清算結了登記の申請時に官報公告を行ったことを証明する書面を提出する必要はなく、解散から2か月以上経過していれば清算結了登記は受理されます。つまり、実際に官報公告をしていなくても、解散から2か月以上経過していれば清算結了登記はできてしまうということです。
官報公告をしない罰則もある
会社法で定められている官報公告をしなかった場合には、罰則も設けられています。会社法では、「この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき」(第976条第2号)には100万円以下の過料に処せられるとされています。たとえ債権者がいない場合でも、公告義務を免れることはできません。
債権者がいないと思われる場合には、わざわざお金をかけて官報公告をしなくてもよいのではないかと考えてしまいがちです。しかし、もし把握していない債権者が出てきた場合には、後日トラブルになる可能性があります。会社を解散したときには、会社法の定めにしたがって官報公告をするようにしましょう。
官報公告の申し込み方法や料金は?
官報公告の申し込み方法
官報への掲載は、全国各地に設けられている官報販売所で申し込みができます。インターネットから申し込みすることも可能です。ただし、掲載申し込みをしてすぐ翌日に掲載されるわけではなく、掲載までに8日程度はかかります。
官報公告の掲載文
官報の掲載文例については、官報販売所もしくは全国官報販売協同組合のホームページで確認できます。解散公告の場合には、以下のような掲載文になります。
解散公告
当社は、令和○年○○月○○日開催の株主総会の決議により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。 なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。
令和○年○○月○○日
東京都○○区○○町○丁目○○番○○号
○○○○株式会社 代表清算人 ○○○○
官報公告の費用
官報公告にかかる費用は、全国どこの官報販売所に申し込んでも同じです。官報の掲載料金は掲載文の行数(1行は22文字)によって変わり、1行あたりの料金は税込3,589円(2020年12月現在)です。
解散公告の場合、会社名を入れて10~12行程度になるため、かかる費用は4万円前後になります。
債権者への個別催告の方法は?
把握している債権者には催告書を送付
債権者への個別の催告は、通常、書面で行います。催告書により、取引先に解散したことを通知すると同時に、債権があれば申し出てもらうよう伝えます。
債権者に催告書を送る場合でも、債権申出期間として、2か月以上の期間を設ける必要があります。
催告書の文例
催告書では、会社が解散した旨と、債権がある場合には期限までに申し出てほしい旨を記載します。
令和○年○月○日
債権者 各位
東京都○○区○○町○丁目○番○号
〇〇〇〇株式会社
代表清算人 ○○○○
催 告 書
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、当社は、令和○年○〇月○〇日開催の株主総会の決議により解散いたしました。 つきましては、当社に対し債権を有する方は、令和○年○〇月○日までにお申し出くださるよう、会社法499条第1項の規定にもとづき、催告いたします。
敬具
債権申出書も同封
債権者宛に催告書を送るときには、申し出がしやすいよう、以下のような債権申出書を同封しておくとよいでしょう。
〇〇〇〇株式会社
代表清算人 〇〇〇〇殿
債権申出書
当社の貴社に対する債権を下記のとおり申し出ます。
発生年月日 | 債権の原因 | 金額(円) |
---|---|---|
令和〇年〇〇月〇〇日 | 〇〇 | 金〇〇円 |
令和〇年〇〇月〇〇日 | 〇〇 | 金〇〇円 |
合計 (円)
まとめ
会社を解散するときには、さまざまな手続きが必要になります。債権者保護のための官報公告も義務付けられているため、忘れずに手続きしましょう。
会社解散の際の官報公告では、債権の申し出のため2か月以上の期間を定めることになります。解散後2か月経過しないと清算結了の手続きができないことにも注意しておきましょう。
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