みなし解散とは?通知がきた際の対応方法
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
事業を行っていない会社を放置していることは多いと思います。現在ではこのような休眠会社は法務局によって整理されることになっており、登記官の職権で解散登記をする「みなし解散」が行われることがあります。
今回は、休眠会社のみなし解散と、みなし解散後に必要な手続きについて説明します。
休眠会社のみなし解散とは?
平成26年度より休眠会社の整理作業が始まっている
会社として登記されているけれど、長期間活動していない会社は「休眠会社」と呼ばれます。このような休眠会社は、日本には多数存在しています。
登記上は存在しているけれど実体のない会社が増えると、商業登記制度の信頼が揺らいでしまいます。そのため、法務局では平成26年度に休眠会社の整理作業を開始しました。毎年1回、休眠会社の整理のための手続きが行われています。
12年間何の登記もされていない会社は整理の対象
法務局が行う休眠会社の整理作業では、12年間登記が行われていない株式会社が対象になります。株式会社の場合には、設立登記をした後も変更登記を行う機会があります。会社として活動していれば、12年も登記をしないということは通常は考えられないからです。
株式会社には取締役などの役員がいますが、役員には任期があるので、任期満了の時点で必ず役員変更登記が必要になります。取締役の任期は多くの会社では2年となっていますが、これは2年に1回は登記手続きをしなければならないということです。役員の任期は最長でも10年です。会社法のルールに則った運営をしていれば、10年以上何の登記もしないということは普通ありません。
こうしたことから、12年何の登記もされていない株式会社は、実体のない会社として、登記官の職権により解散の登記が行われることになりました。会社が解散手続きをしていないのに解散したものとみなされるため、この職権による解散は「みなし解散」と呼ばれます。
みなし解散の手続きと流れ
対象となる休眠会社
休眠会社の整理作業は、毎年10月に設けられた基準日(法務大臣による官報公告が行われた日)時点で、最後の登記から12年が経過している株式会社を対象に行われます。ただし、基準日時点で直ちにみなし解散が行われるわけではありません。
有限会社(特例有限会社)は、みなし解散の対象にはなりません。有限会社の場合には法律上の任期がなく、本人が辞任するか株主総会による解任などがない限り、ずっとそのまま役員でいることができます。登記しないまま一定期間が経過しても、解散とみなす扱いはありません。
「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすれば解散にならない
まず、対象となる休眠会社の代表者宛に、法務局から通知書が送られます。通知書には休眠会社として整理の対象になったこと、及びまだ会社の事業を廃止していない場合には2か月以内に法務局にその旨を届け出るようにということが書かれています。
「まだ事業を廃止していない」旨の届出書は通知書に付属しており、必要事項を記入して法務局に提出すれば届出ができるようになっています。2か月以内にこの届出をすれば、すぐに解散にはなりません。また、届出をしなくても、2か月以内に役員変更登記等の必要な登記をすれば、みなし解散は防げます。
なお、届出をした場合でも、その後やはり必要な登記手続きをしないまま放置していると、翌年も整理の対象になってしまいます。さらに、必要な登記手続きをしない会社は、登記懈怠として過料の制裁を受けることもあります。
届出も登記もしなければ2か月でみなし解散
法務局から休眠会社として通知書を受けた後、2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出も必要な登記も行わない場合には、登記官の職権で当該会社について解散の登記が行われます。
住所変更などの事情で法務局からの通知書が届かなかった場合でも、みなし解散の手続きは進められます。会社を12年以上登記せずに放置していれば、知らない間に会社が解散になっていたということもあり得ますから注意しましょう。
株式会社がみなし解散となる例
令和2年は、10月15日の時点で12年以上登記がされていない株式会社に対し、管轄の法務局から通知書の発送が行われています。たとえば、平成20年8月に役員変更登記を行って以降何の登記もしていない株式会社は、令和2年8月に12年が経過したことになるため、整理の対象になっているはずです。法務局から通知書が届いたにもかかわらず、同年12月15日までに「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなければ、みなし解散の扱いになります。たとえ営業を行っていたとしても、強制的に解散になるということです。
みなし解散が行われた会社はどうなる?
みなし解散があっても会社はなくならない
みなし解散が行われても、会社がなくなるわけではありません。株式会社というのは、解散した後、清算手続きを行い、清算結了した段階で法人格が消滅します。みなし解散になっても、会社は存続していることになります。
ただし、会社が解散すると、営業活動はできません。再び営業活動を行うには、会社継続の手続きをとる必要があります。
3年間は会社を復活させることもできる
会社が解散した後であっても、清算結了する前であれば、会社の継続を選ぶことも可能です。みなし解散した会社の場合でも、解散から3年以内であれば会社継続の手続きができます。
会社継続には、株主総会の特別決議が必要です。さらに、株主総会の決議後2週間以内に法務局で会社継続の登記を行わなければなりません(会社継続登記の前提として、清算人の登記も必要となります。)。
みなし解散になっても、3年以内に会社継続の手続きをすれば、会社を復活して再び事業を行うことができます。
みなし解散後に放置するとみなし清算される?
会社で事業を行っていなくても、会社を閉鎖するには手間や費用がかかってしまうため、放置しているケースは多いと思います。放置している会社を自動的に解散にしてくれるとなると、手間も費用も省けて好都合と考えるかもしれません。
しかし、正式に会社を閉鎖するには、解散後の清算手続きが必要です。法務局はみなし解散をしてくれても、みなし清算はしてくれません。みなし解散から3年以内であれば会社継続の手続きはできますが、3年経過しても自動的に清算になるわけではないのです。
10年経つと登記記録が閉鎖される可能性はある
商業登記規則では、解散の登記をした後10年が経過したときには、登記官は登記記録を閉鎖できると規定されています(81条1項1号)。
しかし、必ず登記記録が閉鎖されるわけではありません。仮に閉鎖されても、清算結了されていない旨の届出があれば登記記録は復活されるので(81条3項)、みなし清算とは言えないでしょう。
会社を消滅させるには清算結了の手続きが必須
みなし解散から3年経ったら清算するしかない
みなし解散になっただけでは会社は消滅しません。会社をなくすには、清算事務を行った後、清算結了登記の手続きが必要です。
会社は損益が発生していなくても、毎年確定申告を行う必要があります。また、法人税の均等割がかかるケースもあります。
将来会社を復活させる可能性があるのなら、こうした手間や費用をかけてでも休眠状態のまま放置しておいた方が良いこともあるかもしれません。しかし、みなし解散から3年を経過してしまうと、会社継続は不可能になります。会社を存続しておくメリットはないので、速やかに清算手続きを行うべきでしょう。
清算手続きの大まかな流れ
会社の清算手続きでは、会社の資産を売却等してお金に換え、債務を弁済し、残った財産を株主に分配します。清算手続きが完了したら、株主総会で承認を受けることにより、清算結了となり、これにより実質的に会社の法人格が消滅します。
なお、会社を完全に閉鎖するには、清算結了後2週間以内に法務局で清算結了登記を行わなければなりません。清算結了登記をすると、登記記録が閉鎖され、会社が消滅したことが誰の目にも明らかになります。
まとめ
会社を放置していてみなし解散になってしまったけれど、清算手続きを行っていない場合には、清算結了して会社を閉鎖させることを考えましょう。
司法書士にご依頼いただければ、手間のかかる会社清算手続きもスムーズに完了できます。当事務所でも清算結了登記まで対応が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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