土地を登記する意味とは?事前にトラブル回避!不動産登記で大切な事
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
不動産の所有権が移転した際などには、法務局で登記手続をすることになります。登記手続きをするとなると、手間や費用がかかりますので、「登記をする義務がないのならしたくない」と考える人もいるかもしれません。ここでは、不動産について登記する意味を解説します。
目次
登記って何?
登記とは公開の帳簿に記載することを言います。日本では、不動産や会社について、登記の制度があります。不動産や会社の情報は、法務局にある登記簿と呼ばれる帳簿に記載され、公開されるしくみが設けられています。ただし、現在では帳簿はコンピュータ化されているため、厳密には登記簿ではなく登記記録と呼ばれます。
不動産について登記制度が採用されている理由は、不動産というのが財産的価値の大きいものだからです。不動産は現物を見ただけで誰が所有しているかわかるようなものではありません。たとえば、土地を売ってくれるという人がいても、その人が本当にその土地の所有者であるかを確かめる手段がなければ、土地を買うのは不安でしょう。登記記録に所有者などの情報が載っているおかげで、誰もが安心して土地を売買できるのです。
登記制度は、不動産の取引の安全を担保するために、重要な役割を果たしています。登記記録に載っている情報は、法務局で登記事項証明書を取得することにより確認できます。利害関係の有無にかかわらず、誰でも法務局で登記事項証明書を取得して、登記記録に書き込みされている不動産の情報を知ることができるようになっています。
登記事項証明書には何が書いてある?
不動産の登記事項証明書は、表題部と権利部の大きく2つに分かれます。権利部はさらに、甲区と乙区に分かれます。それぞれに記載されている内容は、次のようになっています。
区分 |
記載事項 |
記載される具体的な内容等 |
|
表題部 |
不動産の物理的現況 |
土地:所在、地番、地目、地積 建物:所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積 |
|
権利部 |
甲区 |
所有権に関する事項 |
・所有権移転(いつ、どのような原因で誰に所有権が移転したか) ・仮差押、仮処分、差押(債権者等の情報) など |
乙区 |
所有権以外の権利に関する事項 |
・抵当権設定(債権者、債権額等の情報) ・抵当権抹消 など |
登記事項証明書を見ることで、不動産の面積や構造などはもちろん、現在の所有者が誰なのかもわかります。また、その不動産が差押されていないか、不動産に担保が設定されているかなどの情報も知ることができます。
土地の登記事項証明書の参考イメージ
登記簿は、現在はコンピュータ化されていますので、厳密には登記記録と言います。登記記録は、1筆(1区分)の土地または1個の建物ごとに、「表題部」と「権利部」に分けて作成されています。
表題部は不動産の物理的現況を記録する部分で、土地の場合には所在、地番、地目、地積などが、建物の場合には所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されます。
権利部は不動産の権利関係を記録する部分で、さらに甲区と乙区に分かれています。甲区には所有権に関する事項が記録され、乙区には抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
なお、マンション(区分建物)の場合には、区分建物の登記記録に、敷地に関する権利(敷地権)が記録されているケースが多くなっています。マンションは通常、土地と建物が一体化した状態で取引されますので、登記記録も一体化した形式になっているのです。
登記が義務付けられているのは「表題部」のみ
不動産登記制度の趣旨から考えると、登記は必ずしないといけないような気がします。しかし、不動産登記で法律上登記が義務付けられているのは、表題部の登記(表示登記)のみになっています。
不動産登記法では、建物を新築した場合には所有者は1ヶ月以内に表示登記をしなければならないと定められており、違反した場合には10万円以下の過料(罰金)が科せられることになっています。権利部の登記(権利登記)については、このような定めはなく、登記をするかどうかは任意となっているのです。
不動産登記の意味
登記をすることで「対抗力」ができる
売買や相続などで土地や建物の所有権を取得したときには、必ず登記しなければならないわけではありません。しかし、登記することで「対抗力」をつけることができます。対抗力とは、自分の権利の存在を第三者に対して主張できる法的効力のことです。
たとえば、土地の所有者であるAさんが、BさんとCさんという全く別の人の間で、それぞれ土地の売買契約をしたとします。このような二重売買が起こってしまった場合、BさんとCさんのどちらが新たな所有者になるのかがはっきりしません。ですから、二重売買のような場合には、先に登記をして対抗力をつけた方が所有者となるということが、民法上のルールとして定められているのです。同じ内容の登記を二重にすることはできませんから、先の例では、BさんとCさんのうち、先に登記をした方が所有者になることができます。
登記には「公信力」はない
登記をすることで対抗力をつけることはできますが、登記により実際にはない権利関係が生み出されることはありません。たとえば、Dさんの土地について売買契約も何もしていないEさんが勝手に所有権移転登記をしても、Eさんは所有者にはなれません。さらに、登記されているEさんが所有者だと信じてEさんとの間で売買契約を結んだFさんも、所有権を取得することはできません。登記には、それを信じて取引した人を保護する力(公信力)はないのです。
もし登記をしなかったらどうなる?
自分の権利を他人に主張できない
不動産登記をするには、法務局申請手続きをする手間がかかりますし、登録免許税が発生することもあります。登記手続きは司法書士に依頼することもできますが、その場合には司法書士に報酬を支払わなければなりませんので、さらに費用がかかってしまいます。そもそも、権利登記は義務ではありませんから、手間や費用をかけてまで登記する意味がわからないかもしれません。
しかし、登記していなければ、自分が所有者であると他人に主張することができませんので、大きなデメリットになります。所有者として登記されていなければ、不動産を担保にして金融機関からお金を借りることもできません。登記上の所有者でなければ、不動産を売りたくなったときにも、手続きがスムーズに進まなくなります。
登記をせずに放置していればトラブルになることも
不動産の登記で義務付けられているのは表題部の登記だけで、権利部の登記は義務ではありません。登記をするしないにかかわらず、売買契約などにより所有権移転の効果は生じます。不動産の所有者が変わっても、必ずしも登記しなくてもよいということです。
しかし、所有者として登記されていなければ、その不動産を売却したり賃貸したりできません。実質的に不動産の所有者であっても、登記していなければその不動産を活用できないということです。また、同じ不動産を二重に売買した場合には、先に登記した方が所有者になるという民法上のルールもあります。もし元の所有者が別の人にも不動産を売ってしまったら、自分は所有者になれない事態が生じてしまいます。つまり、不動産を登記せずに放置しておくことには、リスクやデメリットがあるということです。
売買により不動産を購入する場合には、通常は不動産会社が間に入るため、登記を忘れるということもないでしょう。登記を忘れたり、放置してしまったりしがちなのは、相続により不動産を取得したケースです。たとえば、親の不動産を相続したら、名義が祖父のままだったということはよくあると思います。
相続による名義変更(相続登記)をしないまま次の相続が発生した場合、最初の相続の相続人全員と、次の相続の相続人全員とで話し合いをしなければなりません。相続人の中に既に亡くなっている人がいれば、その相続人も関与が必要になります。このように権利関係が複雑になると、争いになりやすい上に手続きがスムーズに進まず、余計なお金や時間がかかることになってしまいます。不動産の所有者が変わったら、速やかに登記をすませておき、トラブルを予防することが大切です。
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