任意整理のメリットとデメリットを司法書士がわかりやすく解説
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
任意整理とは、裁判所を通さずに、債権者(ローン会社など)と直接交渉して、返済額を減額してもらう手続き。
任意整理の最大のメリットは、将来利息をカットしてもらえること。
任意整理をすると、5年程度はブラックリストに載ってしまい、新たな借り入れをすることができない。
任意整理の概要と大まかな流れ
任意整理とは
法律的な手段を用いて借金を整理することを債務整理(さいむせいり)といいますが、任意整理は債務整理の1つの方法です。任意整理では、裁判所を通さず、債権者に直接毎月の返済額の減額を申し入れ、交渉します。
この場合の「債権者」とは、消費者金融やクレジット会社、銀行などの貸金業者です。債権者との間で交渉が成立すれば、それ以降は新たな支払い条件で支払いを行うことになります。
任意整理の流れ
任意整理をするときには、以下のような流れになります。
弁護士や司法書士に相談・依頼
貸金業者に直接交渉しても、借金の減額には簡単に応じてもらえません。そこで、任意整理は司法書士などの専門家に依頼するのが通常です。初回は無料で相談ができる事務所も多いので、説明をよく聞いて依頼しましょう。
受任通知の発送・取引履歴の開示請求
弁護士や司法書士から貸金業者に受任通知を送ります。受任通知送付後は督促も止まるので、支払いもストップしてかまいません。受任通知発送と同時に取引履歴の開示も請求します。
取引履歴の確認・借金の残額の確定
貸金業者から取引履歴の開示があったら、借入残高を確認します。契約金利が利息制限法を超えている場合には、利息を払い過ぎていて過払い金が生じている可能性があります。この場合には、利息制限法の制限利率にもとづく引き直し計算を行い、払い過ぎの利息を借金の支払いに充てて借入残高を減らします。
和解交渉
将来利息をカットし、毎月の返済額を減らして長期分割弁済できるよう貸金業者と交渉します。返済額を減らしても3~5年で完済できる場合には、和解に応じる貸金業者が多くなっています。
和解成立・支払い開始
貸金業者との間で新たな支払い条件の合意ができれば、和解契約書を交わします。和解成立後は、和解契約書に記載された条件で毎月の支払いを行います。
任意整理のメリットとは?
- 貸金業者からの督促がストップする
- 将来利息のカットで返済額を圧縮できる
- 自己破産や個人再生ほど煩雑な手続きを必要としない
- 過払い金を取り戻せる
- 遅延損害金もカットしてもらえることがある
- 債権者ごとに手続きするかどうかを選べる
- 家族や職場に内緒で手続きしやすい
貸金業者からの督促がストップする
上で説明したように、任意整理を開始するときには、司法書士等から貸金業者宛に受任通知書を送ります。受任通知書を送付した後は、貸金業法の規制により、貸金業者からの督促が止まります。和解が成立するまで返済も中止していいので、精神的に解放され、落ち着いて手続きを行うことができます。
将来利息のカットで返済額を圧縮できる
任意整理の最大のメリットは、将来利息をカットしてもらえることです。つまり、任意整理後の返済期間中は、元本に対して新たな利息が発生しないということです。
通常、毎月の返済額を減らそうとすると、完済までの期間(返済期間)が延びます。返済期間が延びると、その分、支払う利息の額が増えるので、返済総額も増えてしまいます。
任意整理した場合には、それ以降発生する利息を免除してもらえるので、借金の返済総額や月々の返済額を減らせることができます。
自己破産や個人再生ほど煩雑な手続きを必要としない
借金の返済が困難になったときには、自己破産や個人再生という方法を選ぶこともできます。自己破産や個人再生の場合には、裁判所への申し立てが必要です。申し立て時には必要書類をたくさん用意しなければならず、手続きも複雑になってしまいます。
任意整理なら裁判所を通す必要がないので、必要書類をたくさん揃えるような手間もかかりません。債権者との直接交渉になるので、迅速に借金の悩みを解決することができます。債務整理にかかる手間と時間を最小限にできるので、ダメージも抑えられます。
過払い金を取り戻せる
利息制限法の制限利率を上回る利率で契約している場合には、毎月の返済時に利息を払い過ぎていて、過払い金(取り戻せるお金)が生じていることがあります。返済中の借金について過払い金を取り戻すには、任意整理が必要です。
任意整理するときに、過払い金を使って残りの借金を減らせば、借金が大幅に減額することがあります。過払い金の方が多い場合には、借金がゼロになり、お金が戻ってくることもあります。
遅延損害金もカットしてもらえることがある
任意整理前に延滞がある場合には、既に発生している遅延損害金は免除してもらえることがあります。ただし、延滞が進んで遅延損害金が多額になっていれば、遅延損害金のカットに応じてもらえる可能性も低くなります。
債権者ごとに手続きするかどうかを選べる
任意整理の場合、すべての借金を整理しなければならないわけではなく、債権者ごとに整理するかどうかを選べます。
たとえば、住宅ローンや車のローンは、債務整理せずそのまま残しておくことで、家や車をとり上げられてしまう事態を防ぐこともできます。
家族や職場に内緒で手続きしやすい
任意整理は、裁判所を通さずに手続きできるので、裁判所から自宅に書面が届くようなこともありません。
また、任意整理を司法書士などに委任した後は、貸金業者から直接連絡を受けることもないので、家族や職場にバレにくいのもメリットです。
任意整理のデメリットや注意点
- 任意整理後は5年間ブラックリストに載ってしまう
- 将来利息のカットで返済額を圧縮できる
- 任意整理しても借金はなくならない
- 必ず和解に応じてもらえるわけではない
任意整理後は5年間ブラックリストに載ってしまう
任意整理のいちばんのデメリットは、ブラックリストに載ってしまうことです。任意整理をした事実は信用情報機関に記録として残ってしまいますが、これがブラックリストに載っていると呼ばれる状態です。
信用情報機関の情報は、他の貸金業者や金融機関からも照会ができます。どこの業者もブラックリストに載っている人にはお金を貸してくれないので、新たな借金はできません。クレジットカードを作ったり、各種のローンを組んだりすることもできなくなります。
なお、ブラックリストに載っている期間は5年程度に限定されています。任意整理の情報が信用情報機関から削除された後は、再び借入等ができるようになります。
任意整理した会社からはずっと借入できない可能性が高い
任意整理後5年程度経つと、信用情報機関の任意整理の情報は削除されるので、新規の借入も可能になります。ただし、任意整理した会社の内部には、過去に誰が任意整理したかという情報が残ってしまいます。
一度お金を返せなくなって任意整理をした人に、再びお金を貸してくれるという業者はあまりありません。任意整理した場合、その会社から再度借入することは難しいと考えておいた方がよいでしょう。同系列のグループ会社等からの借入も難しくなることがあります。
任意整理しても借金はなくならない
任意整理では将来利息をカットできるので、総返済額を減らすことができます。しかし、任意整理では借金の元本自体を減らせるわけではありません。
借金をなくしたり大幅に減額したりしたい場合には、自己破産や個人再生の方がよいことになります。
必ず和解に応じてもらえるわけではない
任意整理では、借金を毎月返済可能な金額まで減らすことができます。ただし、毎月の返済額を減らしても、残った借金は3~5年以内に返済できなければなりません。
借入金額が大きいため、5年かかっても借金を完済できないようなケースでは、和解に応じてもらうのは困難です。任意整理ができない場合には、自己破産や個人再生を選ばざるを得ないことになります。
まとめ
消費者金融等で借金をしたけれど、毎月の返済が難しく悩んでいる方は、任意整理をするのがおすすめです。任意整理では、債権者の合意を得た上で、毎月の返済額を減らしてもらえます。
任意整理では将来利息をカットできるメリットがありますが、借金自体が大きく減るわけではありません。手続きすればブラックリストに載るというデメリットもあります。
任意整理の可否やタイミングについて、当事務所でもご相談に応じていますので、お気軽にお問い合わせください。
お探しの記事は見つかりましたか?
関連する記事はこちら
お客様の生の声
コラムカテゴリー
- トップページ
- はやみず総合事務所について
- お客様の生の声
業務内容・サービス紹介
- 法人向けサービス
よくあるご質問
- よくあるご質問
コンテンツ
- プライバシーポリシー
- 求人情報
新着情報
2024/12/28
年末年始の営業のお知らせ2024/07/24
資格予備校のアガルートアカデミー公式サイトに特別インタビューが掲載されました。2024/03/02
【解決事例】前妻の子が共同相続人になるケース2024/01/24
売れない「負動産」を相続した際の対処方法を司法書士が解説2024/01/24
相続は行政書士?司法書士?どちらに頼むべきか|相続の業務範囲を徹底比較