取締役の重任登記のタイミングと手続きについて
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
会社の役員は登記されており、重任があったときにも重任の登記が必要になります。
今回は、重任登記について説明します。重任登記のタイミングや手続きの流れを知っておきましょう!
株式会社の役員には『任期』があり、その任期が満了した時には、新たに役員を選任しなければならない。
同じ人が役員に就任する事を『重任』といい、役員が重任した時は、法務局に登記を申請しなければならない。
長期間にわたり重任登記を怠ると、『過料』に処せられたり『解散の登記』がされてしまうことがある。
株式会社の役員には任期がある
株式会社の役員の原則的な任期は?
株式会社の役員とは、取締役や監査役のことです。取締役や監査役には任期があります。取締役等の任期については、会社法に規定があります。
取締役の任期は原則として2年です。厳密には、「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」任期が続きます。
これは、株主総会の際に次の役員を選任するので、それまでの間に取締役が不在になったら困るからです。
監査役の任期は原則として4年です。こちらも、厳密には、「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となります。
役員の任期の短縮や伸長もできる
役員の任期は必ずしも会社法の規定どおりでなくてもかまいません。任期の短縮や伸長ができるケースがあります。
取締役の任期は、定款または株主総会の決議により短縮可能です。また、非公開会社(※株式譲渡制限がある会社)の場合には、取締役の任期を定款で10年まで伸長できます。
監査役の任期については短縮不可能ですが、非公開会社の場合には定款で10年まで任期を伸長できる点は取締役と同様です。
特例有限会社や合同会社の役員には任期がない
通常の株式会社の役員には任期がありますが、特例有限会社の役員には任期がありません。特例有限会社とは、2006年の会社法施行時に有限会社として存在していた会社です。
会社法施行と同時に有限会社は廃止されて株式会社になりましたが、従前から設立されていた有限会社は特例有限会社として特則が適用されます。役員の任期がないのも特例有限会社の特則の1つです。
合同会社は会社法施行により新しく設立できるようになった会社の形態です。合同会社には株式会社よりも安い費用で設立ができる、経営の自由度が高いといったメリットがあります。合同会社の役員にも任期はありません。
役員の任期が満了したら役員変更登記が必要
役員に変更があったら役員変更登記をする
株式会社の役員に関する事項は登記事項になっています。役員に関する事項に変更があった場合には、法務局で役員変更登記が必要です。
たとえば、新しい人が役員に就任した場合には就任登記が、辞任や退任によりそれまで役員だった人がやめた場合には辞任登記や退任登記をしなければなりません。
また、結婚などにより役員の氏名が変わった場合にも、役員変更登記が必要です。代表取締役は自宅の住所も登記事項となっているので、代表取締役が引っ越して住所が変わった場合にも役員変更登記を行う必要があります。
同じ人が役員になる場合にも重任登記が必要
役員の任期が満了したけれど、同じ人が引き続き同じ役員の地位に就くということもあります。任期満了後、間をおかずに同じ人が役員に就任することを「重任」といいます。「再任」ということもありますが、商業登記では「重任」という言葉を使います。
重任の場合には役員に変更があったわけではないので、役員変更登記は不要と考えている人も少なくありません。しかし、役員の重任があったときにも、役員変更登記(重任登記)が必要です。
役員は任期満了の時点で一旦退任し、同時に就任したものと扱います。同じ人が役員を継続する場合でも、株主総会で重任の決議をとった上で、重任登記を行わなければなりません。
重任登記の手続き方法やタイミングは?
定時株主総会で役員重任の決議をとる
『取締役』や『監査役』は、株主総会の決議により選任します。役員が重任する場合には、まず定時株主総会で役員重任の決議をとる必要があります。
なお、『代表取締役』は取締役の中から選ばれます。取締役は任期満了時に一旦退任することになるため、同じ人が代表取締役になる場合でも、再度代表取締役の選定手続きが必要です。各会社で定められた選定方法(取締役会の決議、取締役の互選、株主総会の決議)で代表取締役を選定します。
重任登記を申請する
株主総会での重任手続きが終わったら、法務局で登記申請をしなければなりません。重任登記の際には、以下のような書類を提出します。
- 重任決議をした株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 代表取締役を選定した取締役会議事録等
- 定款
重任決議をした株主総会議事録
取締役等の重任決議をした際の株主総会議事録を添付します。
株主リスト
会社の株主の氏名・住所・持ち株数を記載した書面です。
就任承諾書
重任する場合にも、再度就任承諾書が必要です。株主総会議事録に就任承諾した旨が記載されていれば別途就任承諾書は必要ありません。
代表取締役を選定した取締役会議事録等
代表取締役を選定したことがわかる書面が必要です。取締役会設置会社では取締役会議事録、取締役会非設置会社では取締役の互選書または株主総会議事録を添付します。
定款
定款で株主総会の定足数を緩和している場合や代表取締役の選定方法を定めている場合など、定款の添付が必要になるケースがあります。
重任登記は任期満了後の2週間以内が原則
会社法では、登記事項に変更が生じたときには2週間以内に変更の登記をしなければならないことが定められています。
重任登記の場合には、定時株主総会で任期が満了し重任されることになるため、定時株主総会の日から2週間以内に登記申請が必要です。
重任登記にかかる費用
重任登記をする際には、登録免許税がかかります。資本金1億円以下の会社は1万円、資本金1億円を超える会社は3万円の登録免許税を登記申請時に支払います。登記申請を司法書士に依頼した場合には、別途司法書士報酬がかかります。
重任登記を忘れてしまった場合は?
原則として2年に1回は役員変更登記が必要
取締役の任期は原則2年です。株式会社には必ず取締役がいるので、2年に1回は役員変更登記が必要になります。
任期満了後も役員が変わっていない場合、役員変更登記をしなければならないことに気付かず、そのままにしていることがあります。このような場合、登記懈怠となってしまうため注意が必要です。
重任登記をしなかったら過料に処せられる
登記懈怠の場合、会社の代表者は100万円以下の過料に処せられる旨が会社法で定められています。過料とは金銭を徴収する行政罰のことです。
役員の任期満了から2週間以内に役員変更登記をしていなければ、過料に処せられることがあります。
ただ、実際には、2週間過ぎたからといってただちに過料ということはなく、半年以上登記が遅れた場合に、数万円から十数万円の過料に処せらるといったケースが多いようです。
役員が変わる場合には、退任登記と就任登記を行います。同じ人がそのまま役員を続ける場合には、重任登記を忘れないようにしましょう。
12年間何の登記もされていない会社は『解散』の登記がされる
上で説明してきたとおり、役員の任期は最長でも10年です。会社法のルールに則った運営をしていれば、10年以上何の登記もしないということは普通ありません。
そういった理由から、12年何の登記もされていない株式会社は、実体のない会社として、登記官の職権により『解散の登記』が行われることになります。会社が解散手続きをしていないのに解散したものとみなされるため、この職権による解散は「みなし解散」と呼ばれます。
みなし解散の登記がされてしまった場合、解散前の状態に復活することもできますが、『会社継続登記』や『取締役などの就任登記』をしなければならず、余分な手間や費用がかかってしまいますので、定期的な重任登記は忘れないようにしましょう。
任期を伸長したい場合にも重任登記が必要
非公開会社の役員の任期は定款で10年まで伸長することができます。定款は株主総会の特別決議で変更できるので、会社設立後に定款変更決議により役員の任期を伸長することも可能です。
ただし、既に任期が満了している場合には、任期の伸長手続きをする前に、重任登記をしなければなりません。重任登記をしていなければ、登記懈怠となってしまいます。
まとめ
株式会社の役員には任期があります。任期が満了したときには必ず役員変更登記をしなければなりません。同じ役員が引き続き就任する場合には、重任の手続きを忘れないようにしましょう。
重任登記には期限がある上に、必要書類も複雑です。登記手続きは司法書士に依頼するのがおすすめです。
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