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遺言書の種類・特徴とそれぞれのメリット・デメリット

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

相続の際に、亡くなった人が遺言を残していれば、法定相続よりも遺言が優先されます。遺言は相続の内容を決定する重要な文書ですが、遺言にはいくつかの種類があるのをご存じでしょうか?

ここでは、遺言書の種類や特徴、それぞれの遺言のメリット・デメリットについて詳しく説明します。

遺言書作成サービス

遺言書の種類と特徴

遺言書

遺言書には「普通方式」と「特別方式」がある

遺言書は、民法で定められた方式で作らなければ効力がありません。民法で定められている遺言書の方式には、大きく分けて「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。

このうち、特別方式の遺言書は、死期が迫っているため、普通方式では間に合わない人が遺言を残す場合を想定したものです。法律に規定はありますが、あまり利用されてはいません。

相続対策として遺言書を残す場合には、通常は「普通方式」です。以下、「普通方式」の遺言について説明します。

普通方式の遺言は3種類

普通方式の遺言は、次の3種類になります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
1,自筆証書遺言

遺言する人自身が直筆で書いて作る遺言書です。遺言書をどこかに持って行く必要もなく、最も手軽に作成できます。

2,公正証書遺言

公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。作成された遺言書は公正証書という公文書になります。

3,秘密証書遺言

遺言書を作成して封をした上で公証役場に持って行き、公証人に遺言書の存在のみを証明してもらう方法で作成した遺言です。

それぞれの遺言書のメリット・デメリット

メリット・デメリット

遺言書を作成する場合には、普通方式の3種類の遺言のうちどれかを選ぶことになります。それぞれの遺言の作成方法と、メリット・デメリットを知っておきましょう。

1. 自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言の全文、氏名をすべて手書きし、押印して作成する必要があります。パソコンで作成することはできません(※ただし、相続法改正により2019年1月からは、遺言書に添付する財産目録はパソコンで作成できるようになります)。

自筆証書遺言が残されている場合、相続手続きの前提として、遺言書の検認が必要です。検認とは、家庭裁判所に申立てをし、遺言の存在・内容を確認して保全する手続きになります。

【メリット】
  • 作成が簡単
  • 作成したことや遺言の内容を秘密にできる
【デメリット】
  • 作成の仕方を間違えると無効になってしまう
  • 改ざんや紛失のリスクがある
  • 自分で文字が書けなければ作成できない
  • 検認が必要

2. 公正証書遺言

遺言公正証書

公正証書遺言を作成するときには、証人2名の立ち会いが必要です。遺言の内容を公証人に口頭で伝えたら、公証人がそれを筆記して遺言者と証人に読み聞かせます。筆記に間違いがないことを確認した後、全員が署名押印して完成です。

実際には、事前に公証人と内容について打ち合わせをし、遺言書の原案を作成しておきます。作成当日には、既に出来上がっている原案の読み合わせをし、署名押印をするのが通常の流れです。できあがった公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。

【メリット】
  • 形式面で無効になる心配がない
  • 改ざんや紛失のリスクがない
  • 公証人のチェックが入るので内容的にも有効な遺言になる
  • 検認が不要
【デメリット】
  • 遺言の存在を完全に秘密にできない
  • 証人や公証人に内容がわかってしまう
  • 手続きが面倒
  • 作成費用がかかる

3. 秘密証書遺言

まず、遺言書を作成して署名押印します。署名以外は自筆でなくてもかまいません。その遺言書に封をし、遺言書に押したのと同じ印鑑で封印します。公証人と証人2名の前に封をした遺言書を提出した後、全員が封書に署名押印します。

秘密証書遺言は、公証役場に保管されるわけではありません。作成後は本人が持ち帰ることになります。

なお、秘密証書遺言の方式をみたしていない場合、秘密証書遺言としては当然無効です。しかし、この場合でも、自筆証書遺言の方式にかなっていれば、有効な自筆証書遺言となります。

【メリット】
  • 改ざんのリスクがない
  • 遺言の内容を秘密にできる
【デメリット】
  • 遺言の存在を完全に秘密にできない
  • 紛失のリスクはある
  • 手続きが面倒
  • 検認が必要

どの遺言書を選べばいい?

遺言書作成サービス

一般に利用されるのは自筆証書遺言か公正証書遺言

普通方式の遺言書は3種類ありますが、秘密証書遺言はあまり利用されていません。秘密証書遺言は、手間がかかるわりに、メリットが小さいからです。

遺言書で一般に利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類になります。これから遺言書を作成するなら、自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらにするかを検討しましょう。

公正証書遺言なら安全・確実に作成できる

遺言書を作成する場合には、公正証書遺言にするのがいちばんおすすめです。公正証書遺言は手間や費用がかかるので、躊躇してしまうこともあるでしょう。しかし、自筆証書遺言にした場合、作成したことを秘密にすれば発見されない可能性があります。一方で、誰かに保管を頼めば、改ざんされることがないとも限りません。

自筆証書遺言は、方式面の要件も厳しくなっています。たとえば、うっかり日付を書き忘れたら、遺言自体が無効です。せっかく遺言を書いても、書いた意味がなくなってしまうこともあります。

公正証書遺言は、形式面で無効になる心配がありません。法律の専門家である公証人が作成しますから、内容的にも有効な遺言になります。原本が公証役場に保管されるので、紛失・改ざんのリスクもありません。公正証書遺言は、遺言を残すにあたっては、最も安全で確実な方法です。

公正証書遺言なら遺族の負担も少ない

公正証書遺言は、相続開始後にもメリットがあります。自筆証書遺言の場合には、遺言書の保管者または発見者は、家庭裁判所に検認を申し立てなければなりません。検認申し立てを怠った場合には、過料という罰則もあります。相続人に手間をかけさせてしまうだけでなく、すぐに相続手続きにとりかかれないのも自筆証書遺言の不便なところです。

公正証書遺言の場合には、検認の必要はありません。相続が開始したらすぐに、遺言書にもとづき相続手続きをとることができます。公正証書遺言は、存在の有無を公証役場で検索することが可能です。遺言書の内容を秘密にしていても、相続開始後に相続人が公証役場に行き、遺言書を発見できます。

遺言書作成は専門家に相談

法律家

遺言書を作成するときには、行政書士・司法書士等の専門家に相談するようにしましょう。自筆証書遺言は自分1人で作成できますし、公正証書遺言は公正役場に直接依頼することも可能です。しかし、遺言書作成を専門家に依頼することには、大きなメリットがあります。

自筆証書遺言は、方式の要件をみたしていることが必要です。行政書士や司法書士に依頼すれば、自筆証書遺言の方式をチェックしてもらえるほか、内容についてのアドバイスも受けられます。遺言の存在を家族に知られたくない場合には、遺言書を預かってもらうことも可能です。

公正証書遺言を残したい場合、行政書士や司法書士にサポートを依頼すれば、遺言書の原案を作成してもらえます。必要書類の取り寄せ、公証人との事前の打ち合わせなども任せられるので、手間がかかりません。

なお、遺言書作成を専門家に依頼した場合、証人や遺言執行者も頼むことができます。遺言書以外の相続対策も含め、総合的な終活の相談が可能です。

まとめ

一般に利用される遺言書の種類は、自筆証書遺言か公正証書遺言になります。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、安全で確実な方法を選びたいなら、公正証書遺言がおすすめです。公正証書遺言を作成する場合にも、専門家に相談し、サポートを依頼しましょう。

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代表プロフィール

速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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