会社の合併手続き

業務提携やグループ再編などの目的で、会社の合併を考えることは多いと思います。新会社法の施行により、会社の合併の制度は従前に比べて利用しやすくなりました。会社合併に関心がある方も多いのではないでしょうか?
ここでは、会社の合併について、基本的な内容をお伝えします。会社の合併にはどんなメリットがあるのか、また、会社の合併ではどんな手続きが必要になるのかを知っておきましょう。

目次

会社の合併手続き

会社の合併には2種類ある

複数の会社を1つの会社とすることを会社の合併といます。
会社法では、「会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない。」(748条)と定められており、会社同士は合併契約により合併できるものとされています。
会社の合併には、「吸収合併」と「新設合併」という2つの方法があります。それぞれの違いは、次のようになっています。

吸収合併

一方の会社が、他方の会社を吸収する形の合併です。吸収する側の会社を存続会社、吸収される側の会社を消滅会社といいます。吸収合併では、消滅会社の持っていた権利や義務はすべて存続会社に承継され、消滅会社は解散することになります。 吸収合併では、消滅会社の株式は消滅することになるため、消滅会社の株主は、株式の対価として、存続会社の株式、社債、現金等を受け取ることができます。

新設合併

複数の会社が合併して新しい会社を設立する形の合併です。
新設合併で新しく設立される会社は新設会社と呼ばれ、元々あった会社はすべて消滅会社となります。
新設合併では、合併する前の会社の持っていた権利義務はすべて新設会社に承継され、消滅会社は解散します。

新設合併でも、吸収合併と同様、消滅会社の株式は消滅します。ただし、新設合併における消滅会社の株主が株式の対価として受け取れるのは、新設会社が発行する株式または社債等に限られます。吸収合併の場合のように、株主が現金を受け取ることはできません。これは、新設合併の場合に現金での清算を可能にすると、株主がいなくなってしまう可能性があるからです。

会社の合併は吸収合併が多い

会社の合併が行われるときは、ほとんどが吸収合併になります。これは、新設合併を選ぶと、合併の手間やコストがかかってしまうという理由が大きくなっています。
たとえば、合併の際には登記が必要ですが、登記の際にかかる登録免許税は、新設合併の方が高くなります。また、国や自治体等の許認可が必要な事業を行っている場合、新設合併で新会社を設立すれば許認可を取り直さなければならず、そのための手間やコストもかかってしまいます。
一方で、吸収合併には、消滅会社の方にネガティブなイメージがついてしまうことがあります。そのため、新設合併して双方の会社が一からスタートすることを選ぶケースもあります。

会社合併にはどんなメリットがある?

事業の拡大や発展、経営不振の際の救済などの目的で、
M&A(企業の合併や買収)が行われること
はよくあります。
会社の合併には、合併前の利益を合計した以上の利益が得られる「シナジー効果」(相乗効果)があると言われており、M&Aの手法として活用されています。会社の合併のメリットは、具体的には以下のような点になります。

売上増加が期待できる

会社を合併すれば、顧客も増えることになります。一方の会社の顧客に対して他方の会社の商品やサービスを売り込むことが可能になり、トータルでの売上が大きく増加することが期待できます。

会社のノウハウを有効活用できる

会社を合併すれば、一方の会社が持っているノウハウを他方の会社の事業にも活用できるようになります。お互いのノウハウを共有することで、業務効率が大きく向上する効果が見込めます。

コストを削減できる

会社を合併すれば、重複している資源などを削減し、合理化することが可能になります。会社の合併は、コスト削減のためにも有効です。

組織的一体感を生むことができる

グループ会社を合併する場合には、会社の垣根を取り払うことにより、従業員の間に同じ組織の人間としての一体感を生むことができます。これにより、従業員のモチベーションも高まる効果があります。

信用力が高まる

会社の規模が大きくなれば、対外的な信用力が高まります。会社の合併には、スケールメリットが得られる効果もあります。

節税効果があることも

会社を合併すれば、1つの会社の黒字事業の利益を別の会社の赤字事業の損失と相殺できることになります。このような節税効果が得られることも、合併のメリットと言えます。

会社合併のデメリットとは?

会社の合併を検討するときには、合併のデメリットも知っておく必要があります。
会社合併のデメリットとしては、次のような点が挙げられます。

手間や時間がかかる

「会社を合併したい!」と考えても、すぐに手続きして新体制でスタートできるわけではありません。会社を合併するときには、法律で定められた手続きを踏む必要があります。合併の手続きでは、債権者保護のための官報公告なども必要になり、最短でも2か月程度の期間はかかってしまいます。手続き期間中は雑務も増えてしまいますから、本業に支障が出てしまうことも考えられます。

コストがかかる

会社の合併手続きを行うときには、契約書印紙代、官報公告費用、登録免許税などのコストがかかります。司法書士や弁護士などの専門家に合併手続きを依頼する場合には、専門家の報酬も発生することになります。コストを上回る効果が見込めない場合には、安易に合併をしない方がよいでしょう。

合併の手続きの流れはどうなっている?

上にも書いたとおり、会社の合併では吸収合併を選ぶケースが大部分です。
そこで、ここでは会社を吸収合併する場合、手続きの流れについて説明します。

1.合併契約の締結

会社同士が合併することが決まったら、合併契約を締結します。合併契約の締結は重要な業務執行に該当するため、合併前の各会社では、事前に取締役会の決議(取締役会非設置会社では取締役の過半数による決定)が必要です。

取締役会の決議を経た後、代表取締役が合併契約書に調印します。合併契約書に記載する事項には、法定記載事項と任意的記載事項があります。

法定記載事項は、会社法により必ず合併契約書に記載しなければならないとされている事項です。法定記載事項の記載を欠くか、またはその記載が違法である契約書は、無効になってしまいます。

法定記載事項

①存続会社及び消滅会社の商号及び住所
②消滅会社の株主に対してその株式に代わる金銭を交付するときは所定の事項
③消滅会社が新株予約権を発行しているときは所定の事項
④吸収合併の効力を生ずる日

任意的記載事項としては、合併の本質または強行法規に違反しない限りどんなことを記載してもかまいませんが、一般的には次のような事項を記載します。

任意的記載事項

①合併に際して変更する存続会社の定款変更に関する事項
②合併に際して就任する存続会社の取締役その他の役員の選任に関する事項
③合併の効力発生日までの剰余金の配当の制限に関する事項
④消滅会社の株主への存続会社の株主総会における議決権の付与に関する事項
⑤合併の効力発生日まで予定される増資・減資、新株発行、組織再編その他株主に利害関係のある重要事項
⑥合併に際し退任する取締役その他の役員に対する退職慰労金の支給に関する事項
⑦合併の効力発生日の変更に関する事項
⑧合併に伴う消滅会社の財産の引き継ぎに関する事項
⑨合併の効力発生日までの存続会社・消滅会社の善管注意義務に関する事項
⑩消滅会社の従業員の存続会社への引き継ぎに関する事項
⑪合併契約書の株主総会その他の承認機関による承認に関する事項
⑫合併契約の変更又は解除に関する事項
⑬合併契約書に規定がない事項・疑義がある事項に関する存続会社・消滅会社間の協議に関する事項
⑭合併契約の効力が発生しない場合に関する事項

なお、合併契約書を書面で作成した場合には、印紙税法の課税文書となるため、収入印紙の貼付が必要です。合併契約書の印紙税は1通につき4万円となっているため、4万円分の収入印紙を貼付して、消印しておきます。

2.事前の情報開示

会社の合併は株主や債権者に重大な影響を与える事項であるため、合併契約書等を会社に備え置き、事前に情報開示することが要求されています。合併前の各会社は、備置開始日から吸収合併の効力発生後6か月経過した日まで、合併契約及びその他法務省令で定める事項を記載・記録した書面・電磁的記録を、それぞれの本店に備え置く必要があります。

3.合併契約の承認決議

合併前の各会社は、合併の効力発生日の前日までに、株主総会で合併契約の承認を得る必要があります。合併契約の承認は、原則として特別決議によることになります。

4.反対株主の株式買取請求

株主総会で合併契約が承認されると、反対株主は合併を阻止することができないことになります。そこで、反対株主は会社に対し、公正な価格で自己の有する株式を買い取ることを請求できるようになっています。

5.反対株主の株式買取請求

財務状況の悪化している会社との合併は、会社の債権者を害することになります。そのため、合併の際には、債権者保護のため、次の事項を官報に公告しなければならないとされています。

①合併する旨
②他の当事会社の商号及び住所
③全当事会社の計算書類に関する事項
④債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨

官報公告の際には、掲載のための費用がかかります。官報公告費用は決算公告の状況などによって変わりますが、5~10万円程度かかるのが一般的です。

さらに、債権者保護手続きでは、公告だけでなく、わかっている債権者に対して個別に催告を行う必要もあります。
そして、もし債権者が異議を述べた場合には、債権者に対して支払いを行うことになります。

6.合併の効力発生

吸収合併では、登記が効力発生要件となっているわけではなく、合併契約書で定めた効力発生日に合併の効力が発生します。

7.合併登記

合併登記は、合併の効力発生日から2週間以内に申請する必要があります。吸収合併の場合、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に申請することになります。

①存続会社の変更登記

存続会社の変更登記は、存続会社の本店所在地に申請します。支店所在地では合併による変更登記は必要ありません。ただし、合併と同時に商号や本店所在地を変更した場合には、支店所在地でも登記が必要です。

合併による変更登記の添付書類

合併による変更登記を申請する際には、次のような添付書類が必要になります。なお、以下は添付書類の一部で、これ以外の書類が必要になることもあります。

○合併契約書
合併契約書を添付する必要があります。

○合併に関する株主総会議事録
存続会社及び消滅会社の合併契約承認の株主総会議事録を添付します。

○株主リスト
株主リストとは、「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」のことです。存続会社及び消滅会社それぞれの株主リストを添付します。

○公告及び催告をしたことを証する書面
存続会社及び消滅会社それぞれにおいて、公告及び催告の債権者保護手続きを行ったことを証する書面を添付します。

○許可書・認可書等
合併が官庁の許認可を効力発生要件としている場合には、許可書や認可書を添付します。

○委任状
登記手続きを司法書士に依頼した場合には委任状が必要です。

合併による変更登記の登録免許税

合併により資本金が増額しない場合には3万円、資本金が増額する場合には増額分の1000分の1.5(※3万円に満たない場合には3万円)の登録免許税がかかります。

②消滅会社の解散登記

消滅会社の解散登記は、消滅会社の本店所在地に申請するほか、支店所在地にも申請が必要です。なお、合併による解散登記では添付書類は不要となっており、登録免許税は3万円となっています。

会社の合併の手続きは複雑な上に、一定の時間がかかるためタイミングも重要になってきます。合併時には社内における準備も必要になりますから、手続きに関しては専門家のサポートが欠かせないと言えます。

「はやみず総合事務所」は合併登記まで対応が可能な司法書士・行政書士事務所です。面倒な会社の合併を丸ごとサポートさせていただきますので、ぜひご相談ください。

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