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カテゴリー: 基礎知識

離婚協議書は公正証書にしておくべき?

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

離婚する際には、離婚協議書を公正証書にしておいた方が良いと言われることがあります。そもそも離婚協議書とはどんな書面なのか、離婚協議書を公正証書にするとどのようなメリットがあるのかを知っておきましょう。ここでは、離婚協議書と離婚公正証書の違いや公正証書作成の流れについて説明します。

離婚協議書作成サポート

離婚協議書と離婚公正証書の違い

離婚している夫婦の9割が協議離婚

夫婦が離婚する際の手続き方法としては、協議離婚、調停離婚、審判離婚、和解離婚、裁判離婚といった方法があります。このうち、唯一裁判所を通さずに手続きできるのが、協議離婚になります。

夫婦双方が離婚に合意し、条件面でも特に争いがなければ、協議離婚が可能です。協議離婚なら、離婚届を役所に提出するだけで離婚できますから、手続きも簡単です。現在の日本では、全体の離婚件数のうち約9割が協議離婚となっているのが現状です。

離婚協議書とは

協議離婚というのは夫婦双方が離婚届に署名捺印し、役所に提出するだけで成立しますが、具体的な条件について何も話し合わないまま離婚してしまったら、後でトラブルになることがあります。

たとえば、夫婦の間に子どもがいる場合には、どちらが親権を持つかということだけでなく、養育費はいくら支払うか、離婚後の面会についてはどうするのかについても、きちんと話し合って決めておくべきです。また、離婚の際には夫婦で築いてきた財産を分ける財産分与もしなければなりません。どちらか一方が離婚の原因を作った場合には、慰謝料を支払う取り決めをすることも可能です。

このように、協議離婚の際に話し合って約束したことについては、口約束ですませずに、合意書の形で書面にしておくのが安心です。協議離婚の際に合意した事項を書面にしたものを一般に「離婚協議書」と呼びます。

離婚公正証書とは

公正証書は、法律の専門家である公証人が、公証役場で作成する公文書になります。契約書を作るとき、公証役場で公正証書にしておけば、確かに約束したという証拠として残すことができます。また、公正証書には、執行力と言って、約束を守らなかった場合にそれをもとに強制執行できるという強制力もあります。つまり、公正証書とは、契約書に特に強い力を持たせたものと言うことができます。

離婚協議書も契約書の一種ですから、公正証書にすることが可能です。離婚の際の取り決めを公正証書にしたものは、正式には「離婚給付契約公正証書」と言いますが、略して「離婚公正証書」と言うこともあります。

離婚公正証書にしておくメリット

公正証書には強制力がある

金銭の支払いの約束をしたのに支払う側(債務者)が約束どおり支払わない場合、支払ってもらう側(債権者)が差押えなどにより強制的に回収を行うためには、原則的には裁判を起こして勝訴判決を得たうえで、強制執行を申し立てる必要があります。

ですが、金銭の支払いの約束をあらかじめ公正証書にしていれば、公正証書自体に強制力があるため、債権者は裁判を経なくても強制執行をすることが可能になります。

養育費が支払われなかった場合に給与差押えが可能になる

公正証書には上記のような強制力がありますので、離婚の際の取り決めのうち、離婚後に支払い義務が残るものについては、公正証書にしておけば支払いの確保がしやすくなります。

たとえば、養育費は、離婚後長期間にわたって支払いを続けるケースが多いと思います。養育費の取り決めを公正証書にしておけば、債務者(※多くの場合子どもの父親)が支払いを怠った場合に、債権者(※多くの場合子どもの母親)は公正証書にもとづき、債務者の給与差押えをして養育費を回収することが可能になります。

心理的な強制力になる

養育費などの支払いについて口約束しかしていなければ、支払う側もどこかで「もう支払わなくてもいいのではないか」という気持ちになってしまいがちです。しかし、公正証書という公的な書面にしておけば、支払う側は「もう言い逃れはできない」という気持ちになったり、「支払わなかったら差押えされる」というプレッシャーを感じたりしますから、約束どおり支払いが行われる確率が高くなります。

公正証書には、このような心理的な強制力をもたらす効果もあります。支払いを受ける側は実際に強制執行を行うとなると手間もかかってしまいますが、公正証書があるだけでも相手方に相当なプレッシャーをかけられますから、作成しておくメリットがあると言えます。

離婚公正証書作成の流れ

1. 離婚協議

離婚の条件について夫婦間で話し合い、公正証書に記載する内容を決めます。離婚の際に協議すべき事項は、概ね次の5つになります。

①親権者

②養育費

③面会交流

④財産分与

⑤慰謝料

⑥年金分割

①②③については、未成年の子がいる場合に取り決めすべき事項です。①についてはそもそも離婚届に記載しますので、必ず決めなければ離婚できません。②③については、話し合って決めた内容を公正証書に記載します。

④⑤については、必要があれば協議して決めますが、離婚前に支払いや受け渡しが完了するなら敢えて公正証書に記載する必要はありません。

⑥の年金分割の合意を行う場合には、公正証書に記載する方法と、別途年金分割合意書を作成して公証人の認証を受ける方法があります。

2. 公証役場に依頼・出頭日時の予約

離婚公正証書は、公証役場に依頼して公証人に作成してもらいます。公証役場は全国に約300ヶ所ありますが、公正証書作成の場合には管轄などはないので、どこに依頼してもかまいません。

公正証書は、公証役場にいきなり行ってすぐに作成してもらえるものではありません。公正証書の作成を希望する場合には、事前に公証人の都合を確認し、公証役場に出頭する日時を予約しておく必要があります。

なお、出頭日には夫婦揃って公証役場に行く必要がありますが、一方又は双方が代理人を立てることも可能です。ただし、一人が双方の代理人を兼ねることはできないので、必ず二人で出頭する必要があります。

3. 公証人と打ち合わせ・必要書類の準備

公正証書に記載する内容については、出頭日までに公証人と打ち合わせしておかなければなりません。直接公証役場に行くか、電話やFAX、メールなどで打ち合わせすることになります。

また、公正証書作成時には、次のような書類が必要になりますから、準備しておきます。

○戸籍謄本

【本人が出頭する場合】

○本人確認書類(免許証、パスポート、個人番号カード、印鑑証明書のいずれか)

【代理人に出頭を依頼する場合】

○本人の印鑑証明書

○委任状

【不動産の財産分与がある場合】

○登記事項証明書

○固定資産評価証明書

【年金分割の合意を行う場合】

○年金分割のための情報通知書

○基礎年金番号がわかる年金手帳コピーなど

4. 出頭・調印

あらかじめ予約した出頭日時に、夫婦(もしくは代理人)が揃って出頭します。打ち合わせした内容に従って公正証書の原稿が用意されていますから、内容に間違いがないか読み合わせをして確認し、出頭した当事者が署名、押印して公正証書を完成させます。

協議離婚の際、養育費など将来に金銭の支払いが残るものがあれば、取り決めした内容を公正証書にしておくのがおすすめです。当事務所では、離婚公正証書作成のお手伝いをします。必要書類の取り寄せや公証人との打ち合わせなどもお任せいただけるほか、代理人として公証役場に出頭することも可能ですので、お気軽にご相談ください。

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代表プロフィール

速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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