定款の原本を紛失したときの対処法と必要になる場面とは
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
定款は、株式会社設立後、本店及び支店に備え置かなければならないことが会社法で定められています。
しかし、現実には定款の原本がどこに行ったかわからなくなってしまうこともしばしばあります。
ここでは、定款の原本を紛失した場合にはどのように対処すれば良いかについて説明します。
目次
定款の原本はどこにあるか?
会社設立時には定款の作成が必要
定款とは、会社の基本的な規則をまとめたものになります。
株式会社を設立する際には、必ず定款を作成しなければなりません。
定款には決まった書式はありませんが、定款に記載する事項についてはルールがあり、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)、定款に記載しておかなければ有効にならない事項(相対的記載事項)、記載してもしなくても良い事項(任意的記載事項)に分かれます。
原始定款の原本は公証役場と会社に保管されている
株式会社の設立時には、定款に公証人の認証を受ける必要があります。
公証人の認証を受けたものが正式な定款となり、最初の定款という意味で「原始定款」と呼ばれます。
原始定款の原本は2部作られ、1部は公証役場で保管されますが、1部は会社に備え付けておくことになります。
なお、定款認証後に設立登記を行う際には、通常は公証役場で発行される定款の謄本を添付します。
「謄本」とは写し(コピー)の意味ですから、中身は定款の原本と同一になります。
定款変更した場合の定款原本は会社にのみ保管されてい
定款というのは会社設立後に変更することも可能です。定款の変更には株主総会の特別決議があればOKで、定款変更の際には公証人の認証は不要となっています。
会社設立後に定款変更を行った場合には、変更後の定款は会社に備え付けておくだけでかまいません。
つまり、原始定款の原本は公証役場にもありますが、定款変更があった場合には、定款(現行定款)の原本は会社にのみ保管されていることになります。
定款を提出する方法
会社は定款の提出を要求されることがある
定款とはその会社がどんな会社なのかという情報が書いてあるものですから、会社が様々な手続きを行う際に、定款の提出を要求されることがあります。このとき、会社に置いてある定款の原本を提出してしまえば、会社保管用の分がなくなってしまいますので、実際にはコピーを提出することになります。
定款には原本証明を付けて提出する
各種の手続きで定款を提出する際には、定款のコピーに「原本証明」を付けるのが一般的になっています。
原本証明とは、そのコピーが原本と相違ない旨を証明する記載になります。具体的には、原本証明は次のようにして行います。
(1) 定款原本のコピーをとって製本した後、各ページに会社の実印(代表者印)で割印をする。
(2) 末尾の余白部分に「この定款の写しは、当社の現行定款に相違ないことを証明します。」等の文言を記載する。
(3) (2)の文言の後に、日付、会社名、代表者名を記載し、会社の実印を押印する。
なお、定款のコピーを提出するときには必ず原本証明を付けるように要求されることもありますが、コピーをとっただけでOKの場合もあります。
あらかじめ提出先に確認するのが確実ですが、原本証明を付けて問題になることは通常ありませんから、よくわからないときには原本証明を付けておいた方が良いでしょう。
定款の提出が必要になる場面
会社が定款の提出を要求されるのは、次のような場面になります。
助成金・補助金等の申請
会社が事業資金を調達するために、助成金や補助金などを活用することがあると思います。助成金・補助金等の種類によって必要書類は異なりますが、定款の写しが必要になることもあります。
行政庁等に許認可等の申請をするとき
事業によっては、行政庁等への許可・認可の申請、届出等が必要になることがあります。許認可申請が必要な事業を行う場合には、会社の定款に、「目的」として当該事業が記載されていなければなりません。
会社の「目的」は登記事項証明書(登記簿謄本)にも記載されていますが、手続きによっては定款の写しの提出も要求されることがあります(例 古物商許可申請など)。
金融機関と取引を行うとき
会社を設立すると、金融機関でも会社名義で口座を開設することができます。
金融機関によっては、口座開設の際に定款の写しの提出が求められることがあります。
このほかに、大口取引を行う場合等にも定款が必要になることがあります。
税務署等に法人設立を届け出るとき
会社を設立した場合には、設立後2ヶ月以内に税務署に「法人設立届出書」を提出する必要があります。このとき、添付書類として定款の写しを添付しなければなりません。
「法人設立届出書」は、都道府県税事務所にも提出する必要があります。
提出期限や必要書類は都道府県によって違いますが、定款の写しの添付を要求されるのが一般的です。
定款の原本を紛失している場合にはどうする?
定款の内容を確認する方法
定款の原本は会社に保管しておかなければならないとはいえ、いつのまにか定款の原本を紛失してしまうこともあると思います。
特に、会社の設立から年数が経っている場合には、定款がどこへ行ったかわからないということはよくあります。
上に書いたような手続きのために定款の写しが必要になった場合に、会社保管の定款の原本を紛失していれば、コピーをとることもできません。このようなときには、次のような方法で対処することができます。
公証役場で定款の謄本を発行してもらう
会社設立時に公証人の認証を受けた定款は、公証役場に20年間は保存されることになっています。
つまり、設立から20年以内であれば、認証を受けた公証役場に依頼して定款の謄本を発行してもらうことができます。(認証を受けた公証役場以外の役場では発行できません。)
ただし、この場合の定款は原始定款になりますから、設立後に定款の変更を行っている場合には、変更を反映させた定款を作り直す必要があります。
法務局で閲覧等して確認
設立登記の際には定款(謄本)を添付しますので、法務局にも定款が残っていることがあります。
登記申請書及び附属書類は申請後5年以内であれば閲覧ができますので、これをもとに定款を再作成することも可能です。
なお、定款変更の登記申請の際には定款そのものは添付しませんので、変更を決議した株主総会議事録を閲覧するか、登記事項証明書をとって確認することになります。
会社設立を依頼した専門家に確認
会社設立を行政書士・司法書士等の専門家に依頼した場合には、事務所で記録を保管している可能性がありますので、定款が残っていないか問い合わせてみましょう。
定款を復元・再作成するには
定款そのもののコピーが手に入る場合以外には、定款を作り直して原本にする必要があります。上記の方法を組み合わせるなどして現行定款を復元できれば、各種の手続きに必要な定款の原本を用意することができます。
なお、定款の内容は、株主総会の特別決議を経ることにより、いつでも変更することが可能です。
どうしても定款を復元できない場合には、登記事項証明書から現行定款の内容を推測した上で、株主総会を開催して定款変更の手続きをとり、新たに定款を作るという方法もあります。
定款の原本を紛失した場合にも、復元するなどして、作り直すことは可能です。
「定款の提出が必要になったのに原本が見当たらない…」という場合には、当事務所にご相談ください。
許認可申請が必要な場合には、トータルに手続きをお任せいただくことも可能です。
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