法人登記の住所変更マニュアル!法務局へ提出する必要書類と費用は?
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
以下では、会社等法人の『本店の住所変更』、『支店の住所変更』、『代表者の住所変更』について、どのような手続きが必要なのかをまとめています!
本店(会社の住所)を移転する場合、『定款』の変更が必要な場合がある。
変更手続きは、①株主総会などの決議、②登記の申請、③税務署などへの各種届出の順で行う。
登記は、原則として住所変更した時から2週間以内に行う。
目次
会社等法人の本店の住所変更
以下、株式会社の本店移転を例に説明します。
本店移転の際に定款変更が必要な場合がある
株式会社の定款には、本店所在地が記載されていますから、本店を移転するとなると、定款の変更が必要になる可能性があります。本店移転をするときには、定款の変更が必要かどうかをまず確認しなければなりません。
定款の本店所在地の記載は、具体的な住所ではなく、『市区町村まで』になっていることも多いと思います。たとえば、以下のように「本店を東京都新宿区に置く」と書いてある場合、本店の移転先が新宿区内であれば、定款の変更は不要です。それ以外のケースでは、会社法で定められている定款変更の手続きをとらなければなりません。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。
定款の変更には、株主総会の特別決議が必要になります。特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議になります。
本店移転手続きの流れ
- 株主総会・取締役会による決議
- 本店移転登記の申請
- 税務署などへの各種届出
1,株主総会・取締役会による決議
定款の変更が必要な場合には、株主総会を開いて、特別決議によって株主の承認を得ます。この場合、『具体的な移転先、移転日』については取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致)で決めることもできます。
定款の変更が不要な場合には、移転先、移転日については取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致)の決議により決めたのでOKです。
定款変更が必要 | ・定款変更の決議【株主総会】 ・移転先、移転日についての決定【株主総会 or 取締役会(取締役の決定)】 |
---|---|
定款変更が不要 | ・移転先、移転日についての決定【株主総会 or 取締役会(取締役の決定)】 |
2,本店移転登記の申請
必要書類(株主総会議事録、取締役会議事録等)を揃えて、法務局で登記申請をします。
登記申請をする法務局や登録免許税は、以下のようになっています。
旧本店所在地と新本店所在地が同一の法務局の管轄である場合
管轄の法務局へ登記申請を行います。
登録免許税は3万円になります。
新本店所在地が旧本店所在地とは別の法務局の管轄である場合
この場合には、新・旧両方の所在地の法務局に登記申請する必要があります。ただし、登記申請書は旧所在地に2件分を提出すれば新所在地に職権で転送されます。
登録免許税は6万円(2件分)になります。
支店の登記がされている場合
登記されている支店がある場合には、支店所在地でも移転日から3週間以内に、本店移転登記が必要です(支店所在地が旧本店所在地または新本店所在地と同一管轄の場合には不要)。
支店所在地での変更登記には、9000円の登録免許税がかかります。
3,税務署などへの各種届出
会社の本店所在地は、さまざまなところに届出されています。本店移転の登記をした場合には、以下のようなところにも届出が必要です。
税務署
会社にかかる国税に関しては、税務署が管轄になります。本店移転があった場合には、税務署に異動届出書を提出して変更を届出しなければなりません。
都道府県税事務所
会社には地方税もかかりますが、都道府県から課税される税金に関しては、都道府県税事務所が管轄になります。本店所在地が変わったら、都道府県税事務所にも異動届出書を提出しなければなりません。
市区町村
会社には市区町村から課税される税金もあります。本店所在地の変更は、市区町村にも異動届出書を提出して届出しなければなりません。
年金事務所
本店所在地の変更があった場合には、社会保険に関しても手続きが必要です。社会保険に関する手続きは、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険適用事業所関係変更(訂正)届」を提出して行います。
労働基準監督署・ハローワーク
会社で労働者を雇用して労働保険に加入している場合、労働基準監督署に加えて、ハローワークにも本店移転の届出を行う必要があります。
会社等法人の支店の住所変更
以下、株式会社の支店移転を例に説明します。
支店移転登記の期限
会社が支店を移転した場合には、本店所在地、旧支店所在地、新支店所在地のそれぞれで登記手続きが必要になります。登記を行う期間は、次のようになっています。
本店所在地 | 移転日から2週間以内 |
---|---|
旧支店所在地 | 移転日から3週間以内 |
新支店所在地 | 移転日から4週間以内 |
支店移転手続きの流れ
- 取締役会による決議
- 支店移転登記の申請
- 税務署などへの各種届出
1,取締役会による決議
支店の具体的な移転先と移転日について、取締役会の決議(取締役会を設置していない会社は取締役の過半数の一致)により決めます。
2,支店移転登記の申請
必要書類(取締役会議事録等)を用意して、法務局へ支店移転登記申請を行います。
登録免許税は、『本店所在地』で行う登記申請については3万円、『支店所在地』で行う登記申請については9000円がかかります。
支店移転登記については、本・支店『一括申請』を行うことも可能となっており、この場合には登記所1庁につき300円の登記手数料がかかります。
3,税務署などへの各種届出
支店移転の登記をした後は、本店を移転した場合と同様、様々な役所に届出をしなければなりません。
会社の代表者の住所変更
以下、株式会社の代表取締役住所変更を例に説明します。
代表取締役の住所変更登記の方法
株式会社変更登記申請書を作成して、法務局に提出します。登記申請書には、住所移転の年月日及び住民票記載の住所を正確に記入しなければなりませんが、住民票を添付する必要はありません。
その他の添付書類も不要ですが、代理人に登記申請を委任した場合には、委任状を添付します。
代表者の住所変更登記にかかる登録免許税は1万円(資本金1億円以上の会社は3万円)となっています。
なお、会社の取締役や監査役等の役員は、定款に最長10年の任期が定められており、その任期が切れるたびに更新の登記をしなければなりませんので、その点も注意しておきましょう。
代表取締役が住所変更したあとに、どんな手続きが必要か
代表者の住所変更登記をした後は、本店を移転した場合と同様、様々な役所に届出をしなければなりません。
まとめ
住所変更の登記は、時間に余裕があり自分で登記申請の方法を勉強できる方は、自分でもできるかもしれません。しかし、登記申請書やその添付書類はルールに従って正確に作成しなければなりません。もし書類に不備があれば、何度も法務局へ行き来しなければならない場合もあり、手間や時間ばかりがかかってしまうことがあります。
特に会社等法人の登記には期限があり、期限内に行わなければ、100万円以下の過料(罰金)に処せられるケースもありますので、変更した場合には速やかに手続きするのがおすすめです。
依頼を受けて登記申請の手続きを代理できるのは、国家資格をもつ司法書士のみになります。住所変更手続きに不安がある場合には、ぜひ司法書士にご相談ください。
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