相続税率の一番カンタンな計算方法
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
相続税の金額は、どのようにして計算することが出来るのでしょうか。
近年、相続税の控除率や税率が改正されて、相続税を支払わなければならないケースも増加しているので、一般家庭でも相続税を支払わなければならない可能性が高いです。
したがって、相続税の基本的な計算方法を正しく理解しておく必要性があのですが、相続税の計算方法はとても難しく、なかなか理解し難いと思われています。そこで今回は、相続税率と計算方法をカンタンにわかりやすく解説します。
目次
相続税を支払うケースが増える?
相続が起こった場合には、基本的に相続税を支払わなければなりません。
しかし、近年までは、多くの人が相続税を支払う必要はありませんでした。具体的には、平成26年(2014年12月31)までは、一般家庭の場合には相続税を支払う必要はほとんどないと言われていたのです。それは、相続税には大きく基礎控除が認められていたからです。相続税の基礎控除とは、課税される遺産の価格から、法定相続人の人数に応じて大きく控除を認める制度のことです。具体的には、平成26年12月31日までは、
5000万円+法定相続人の人数×1000万円
の基礎控除が認められていました。
たとえば相続人が2人の場合には、遺産の額が5000万円+2人×1000万円=7000万円までの場合には、相続税を支払う必要はなかったのです。ところが、平成27年1月1日からは、この相続税の基礎控除が大きく削減されたため、多くの家庭で相続税の支払いの必要が発生すると言われています。
平成27年度税制改正の内容は?
相続税の計算に大きな影響を及ぼす平成27年度の相続税制度の改正は、どのような内容になっているのでしょうか。この税制改正は、平成27年1月1日以降の相続に対して適用されます。具体的な内容は、以下のとおりです。
まずは、相続税の基礎控除が減らされました。具体的には、それまでとは異なり、
3000万円+法定相続人の人数×600万円
までしか基礎控除が認められなくなりました。たとえば先の例で言うと、相続人が2人の場合には、3000万円+2×600万円=4200万円までしか基礎控除が認められないのです。それ以上の課税対象の遺産がある場合には、相続税支払いの必要が発生します。
また、平成27年度の税制改正では、相続税を支払わなければならない場合の相続税の税率そのものも変更されました。具体的な相続税の税率は、以下の表のとおりです。この税率は、課税対象の遺産の額から基礎控除を差し引いた金額に対してかかってくる税率になります。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~1,000万円以下 | 10% | |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超~ | 55% | 7,200万円 |
具体的に見てみましょう。たとえば、課税価格が2000万円の場合には、2000万円×0.15-50万円=250万円が相続税の価格になります。相続税の計算の際には、この計算方法によって算出された相続税の金額を、各自の相続分に応じて配分することが基本になります。
相続税の計算方法
相続税の基礎控除や相続税率については上記のとおりですが、具体的に相続税を計算する際には、他に考慮しなければならない要素もあり、さらに複雑な計算方法になっています。そこで、以下では、相続税率を使った相続税の計算方法について、順を追って具体的に見てみましょう。
1.まずは遺産の額を計算する
相続税の計算をする際には、まずは遺産の額を計算しなければなりません。
遺産の額は、基本的に残された遺産を評価した金額の合計になりますが、ここから非課税の遺産の額や、借金などのマイナスの財産の額を差し引くことが出来ます。また、控除の対象になる葬儀費用も差し引くことが可能です。よって、遺産の額は「プラスの財産の額-(非課税財産の額+マイナスの財産+控除の対象となる葬儀費用)」(以下、「①の金額」とします。)の計算式で計算出来ます。たとえばプラスの遺産が1億円あって、借金が3000万円ある場合には1億円-3000万円=7000万円が遺産の額になります。
2.遺産の額に死亡前3年間の贈与の金額をプラスする
遺産の額を計算しても、必ずしもその価格がそのまま課税価格になるとは限りません。
課税価格を計算する際には、相続前の3年間に贈与があった場合には、その贈与分の金額もプラスする必要があるからです。よって、課税価格の計算方法は「遺産の額(①の金額)+3年以内の贈与の金額」(以下、「②の金額」とします。)なります。
たとえば、遺産の額が1億円のケースで、被相続人(亡くなった人)が、相続開始の2年前に子どもに1000万円分の贈与をしていた場合には、1億円-1000万円=9000万円が課税価格になります。
3.課税価格から基礎控除を差し引く
ここまでの計算で、課税価格が算出できました。
相続税を計算する場合には、この課税価格から基礎控除分を差し引くことが出来ます。その基礎控除の価格が、平成27年1月1日から大きく削減されたのです。具体的に、平成27年1月1日以降の課税される遺産の額の計算方法は、以下のとおりになります。
「課税価格(②の金額)-(3000万円+法定相続人の人数×600万円)」(以下、「③の金額」といいます。)です。
たとえば、課税価格が9000万円のケースで、法定相続人が2人の場合には、
課税される遺産の金額(③の金額)は9000万円-(3000万円+2人×600万円)=9000万円-4200万円=4800万円になります。
4.課税される遺産額を法定相続分に応じて割り振る
課税される遺産の額(③の金額)が計算出来たら、その金額を、まずは法定相続分に応じて割り振る必要があります。
この計算においては、実際には法定相続分以外の方法で遺産を分け合う場合でも、相続税の計算においては、先に法定相続分に応じて相続税を計算する必要があるので注意が必要です。
たとえば、課税される遺産の金額(③の金額)が3億円の場合で、配偶者と子どもが2名いる場合には、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1の法定相続分になります。よって、遺産額の配分は、3億円×0.5=1億5千万円(配偶者分)3億円×0.25=7500万円(子ども一人の分)3億円×0.25=7500万円(子ども一人の分)となります。実際の相続分が上記と異なる場合(たとえば配偶者と子ども達で3分の1ずつにする場合)なども、いったんは上記のように法定相続分に応じて遺産額を割り振る必要がありますので、注意しましょう。
5.割り振られた遺産額に相続税率をかけて合計する(相続税の総額を出す。)
上記の方法で遺産額を法定相続分に応じて割り振ったら、その金額に応じて相続税率をかけて各々の相続税の金額を計算します。
たとえば、上記の例で、配偶者に割り振られた遺産額は1億5千万円です。ここで、上記の相続税の税率の表を用いて相続税の金額を計算します。具体的には、配偶者に割り振られる相続税の金額は1億5千万×40%-1700万円=4300万円になります。
子ども達それぞれも同じように計算します。子ども達に割り振られる遺産額は、7500万円ずつなので、相続税の価格は、それぞれ7500万×30%-700万円=1550万円になります。
このケース全体に課税される相続税の金額は、これらの相続税の金額をすべて合計した金額(以下「④の金額」と言います)になります。全体的には4300万円(配偶者の分の相続税)+1550万円(子ども一人分の相続税)+1550万円(子ども一人分の相続税)=7400万円がこのケース全体に割り振られる相続税の金額(④の金額)になります。
6.合計された相続税額を相続割合に応じて分配する
相続税の金額(④の金額)が計算できれば、あとはその相続税の金額を、実際に相続する割合に応じて配分するだけです。以下では、法定相続分とおりに相続する場合と、法定相続分とは異なる割合で相続する場合に分けて計算例を見てみましょう。
法定相続分通りに相続する場合、上記の3-5の例で、配偶者と子ども達が法定相続分どおりに相続するのであれば、相続税の金額(④の金額)を、そのまま法定相続分で割り算すれば計算出来ます。具体的には、配偶者の相続税支払い分が7400万円×0.5=3700万円になります。
子ども達の相続税支払い分が、それぞれ7400万円×0.25=1850万円になります。
ただし、配偶者には大きく相続税の控除が認められています。具体的には、配偶者が相続する場合には、配偶者の相続分が1億6千万円以下の場合または法定相続分に満たない相続分である場合、全額控除されます。よってこのケースでも、配偶者は相続税の支払いをしなくて良いことになります。
7.法定相続分とは異なる割合で相続する場合
次に、法定相続分通りに相続しない場合を見てみましょう。
上記の3-5の例で、配偶者が5分の2、長男が5分の2、次男が5分の1の割合で遺産を相続するとします。この場合も、相続税の金額(④の金額)の計算方法は同じになりますので、7400万円です。ただ、個々人が具体的に支払う相続税の金額を計算する場合には、この金額を配偶者と子ども達2名の3人で、実際の相続分に応じて割り振る必要があります。具体的には配偶者の支払う相続税の金額が7400万円×0.4(5分の2)=2960万円、長男の支払う相続税の金額が7400万円×0.4(5分の2)=2960万円、次男の支払う相続税の金額が7400万円×0.2(5分の1)=1480万円になります。
ただし、上記で説明したとおり、配偶者については、配偶者の相続分が1億6千万円以下の場合または法定相続分に満たない場合には、相続税は控除されます。よって、このケースでも、配偶者は実際には相続税支払いの必要はないということになります。
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