合同会社の解散登記・清算手続きの進め方
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
合同会社を廃業するには、『解散・清算の手続き』が必要です。
この記事では、合同会社の解散・清算手続きの流れや必要書類などについて説明します!
合同会社を廃業するには、法律で定められた手順で『解散・清算の手続き』をする必要がある。
解散・清算手続きには、登記の登録免許税・官報公告費用・専門家の報酬などの費用がかかる。
『清算結了』により登記簿を閉鎖するまで3ヵ月程度はかかる。
目次
合同会社の廃業手続きはどう進める?
合同会社は2006年に新たに設けられた会社形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにしており、日本版LLCと呼ばれます。
合同会社には決算公告の義務や役員の任期もなく、社員総会などの設置が不要で意思決定がスムーズにできるというメリットがあるため、設立件数は年々増加していますが、その分、経営がうまくいかない等の理由で、廃業する合同会社も多いの実情です。
合同会社を廃業する場合には、法律に定められた手続きを行う必要があります。合同会社を廃業する手続きは、『解散』、『清算』という2段階の手続きになります。
合同会社の解散事由
会社法では、合同会社は次の事由により解散すると規定されています!
- 定款で定めた存続期間の満了
- 総社員の同意
- 社員が欠けたこと
- 合併(合併により会社が消滅する場合)
- 破産手続開始の決定
- 解散を命ずる裁判
合同会社は、特別な理由がなくても、『総社員の同意』があれば解散できます。つまり、自主的に廃業したい場合には、社員全員の同意をとればよいということです。
以下、総社員の同意により合同会社を解散・清算する場合の流れや手続きを説明します。
合同会社の解散・清算の流れ
- 解散の決議、総社員の同意書の作成
- 清算人の選任
- 解散及び清算人選任の登記(解散日から2週間以内)
- 税務署及び自治体への会社解散届の提出
- 解散・債権申出の公告(解散後遅滞なく)
- 財産目録・貸借対照表の作成(清算人就任後遅滞なく)
- 解散確定申告(解散後2か月以内)
- 債権取り立て、債務弁済
- 残余財産の分配
- 清算事務の終了
- 清算結了の登記(社員の承認から2週間以内)
- 税務署及び自治体への清算結了届の提出
1,解散の決議、総社員の同意書の作成
まずは、総社員による解散の決議を行い、『総社員の同意書』を作成します。
【総社員の同意書の例】
解散決定書
当会社の解散に関し、社員全員の一致をもって、次の事項を決定する。
1.当会社は、令和○年○月○日総社員の同意により解散するものとする。
上記のとおり決定し、社員全員が記名押印する。
令和○年○月○日
〇〇合同会社
社員 新宿 太郎 ㊞
同 高田 花子 ㊞
2,清算人の選任
会社の清算手続きを行う『清算人』を選任します。会社の代表者がそのまま清算人に就任するのが一般的です。清算人が決まったら、『清算人選任決定書』と『就任承諾書』を作成します。
【清算人選任決定書の例】
清算人選任決定書
当会社の清算人として、次の者を選任する。
東京都豊島区南池袋2-26-4 南池袋平成ビル10階
新宿 太郎
上記のとおり決定し、社員全員が記名押印する。
令和○年○月○日
〇〇合同会社
社員 新宿 太郎 ㊞
同 高田 花子 ㊞
【就任承諾書の例】
就任承諾書
私は、令和○年○月○日、貴社の清算人に選任されたので、その就任を承諾します。
令和○年○月○日
東京都新宿区高田馬場二丁目14番27号
新宿 太郎 ㊞
〇〇合同会社 御中
3,解散及び清算人選任の登記(解散日から2週間以内)
法務局で解散及び清算人選任の登記を行います。登記の際の必要書類は、次のとおりです。
①登記申請書
登記申請書は定められた書式に従って作成する必要があります。書式及び記載例は法務局のホームページからダウンロードできます。
【参考】法務局:商業・法人登記の申請書様式(合同会社解散及び清算人選任登記申請書)
②総社員の同意書
社員全員が、会社を解散すること同意したことを証する書面です(上記を参照ください。)。
③清算人選任決定書
社員が、清算人を選任したことを証する書面です(上記を参照ください。)。
④清算人の就任承諾書
清算人に選任された人が、その就任を承諾する旨を記載した書面です(上記を参照ください。)。
⑤印鑑届書
合同会社が解散すると、それまでの代表者印は廃止されます。解散後は、清算人として代表者印を登録し直す必要があるため、印鑑届書を提出します。印鑑はそれまでと同じものを使ってもかまいません。
⑥清算人の印鑑証明書
印鑑届書には清算人の印鑑証明書を添付する必要があります。市区町村発行の、発行から3か月以内のものを添付します。
⑦委任状
登記申請を司法書士等に委任する場合には、委任状が必要です。
4,税務署及び自治体への会社解散届の提出
会社には税金がかかっているため、税金に関する届出が必要です。
①国税(法人税)
解散後速やかに、税務署に異動届出書を提出しなければなりません。
②地方税(法人事業税、法人住民税)
都道府県税事務所と市町村役場に届出が必要です。各自治体で定められている期限までに、必要書類(登記事項証明書、定款など)を添付して届出します。
5,解散・債権申出の公告(解散後遅滞なく)
2か月以上の期限を定め、会社の債権者は申し出るべき旨の官報公告を行います。わかっている債権者に対しては、個別の通知が必要です。
【解散公告の例】
解散公告
当社は、令和三年十月五日総社員の同意により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。
なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。
東京都新宿区高田馬場二丁目14番27号
合同会社〇〇
代表清算人 新宿 太郎
6,財産目録・貸借対照表の作成(清算人就任後遅滞なく)
清算人は解散日における会社の財産の現況を調査して、『財産目録』及び『貸借対照表』を作成しなければなりません。作成した財産目録・貸借対照表の内容は、社員に通知する必要があります。
7,解散確定申告(解散後2か月以内)
事業年度開始日から解散日までを1事業年度とし、税務署に確定申告・納税を行います。
8,債権取り立て、債務弁済
債権の回収や債務の弁済を行います。貰うものは貰い、支払うべきものは支払ったうえで、会社の資産は現金化して、最終的な会社に残った財産(残余財産)を確定させます。
9,残余財産の分配
会社の残余財産が確定したら、出資額に応じて社員に分配します。
10,清算事務の終了
9までのすべての清算事務が終了したら、清算に係る計算をして、『清算結了承認書』及び『清算計算書』を作成します。作成した書面については、社員の承認を受けます。
11,清算結了の登記(社員の承認から2週間以内)
法務局で清算結了の登記を行います。登記の必要書類は、次のとおりです。
①登記申請書
書式、記載例は法務局のホームページからダウンロード可能です。
【参考】法務局:商業・法人登記の申請書様式(合同会社清算結了登記申請書)
②清算結了承認書及び清算計算書
「(10)清算事務の終了」で作成したものです。
③委任状
登記申請を司法書士等に依頼する場合には、委任状が必要です。
12,税務署及び自治体への清算結了届の提出
会社解散届と同様、税務署、都道府県税事務所、市町村役場に清算結了届を提出します。
合同会社の解散・清算手続きにかかる費用
登録免許税
解散・清算結了登記の際に3万9000円、清算結了登記の際に2000円の登録免許税を納付する必要があります。
官報公告費用
行数によって変わりますが、概ね3万5000円程度になります。
専門家の報酬
解散・清算手続きを司法書士や税理士に依頼した場合には、別途報酬を払う必要があります。報酬の相場はサポートを受ける業務の範囲等によって、数万円~数十万円と幅があります。
合同会社の解散・清算手続きにかかる期間
合同会社を解散した後には、2か月以上の期間を定めて官報公告を行わなければなりません。会社を廃業するには、最低でも2か月の期間がかかります。書類を準備する期間を含めると、3か月以上の期間をみておくのがおすすめです。
まとめ
合同会社を設立するのは比較的簡単です。しかし、合同会社の解散・清算手続きには2か月以上の期間がかかり、株式会社の解散・清算と同様の手間が発生します。法務局への登記申請が2回必要になるため、作成しなければならない書類も多くなります。
当事務所では合同会社の解散・清算手続きをお手伝いします。司法書士は法務局への登記申請も代理できますので、面倒な手続きはすべてお任せいただけます。合同会社の廃業でお困りなら、ぜひお問い合わせください。
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